3.急展開にも程がある ページ3
「おまっ、それ分かって言ってるだろ…!」
「んふふ、さあね?」
「…な、なん…」
語彙力で殴られそうと察知した為、剣持がまた何か言う前に背を向け立ち上がる。
剣持の様子が少し気になり振り向くと、案の定剣持は何か言いたげだったが、視線を下に移して口を閉じた。
…寂しげな表情をしていたのは気のせいだろうか。
気を取り直し、辺りを見渡してみるが、分かったことは草原ということと、横に一本の大木があるということだけ。
「少し歩いたら何かわかるかな」と安易な考えで歩き始める。止まっていても何も始まらないから。うわ、私なんかカッコイイこと言ってる。
「あ、ちょっと待ってください!」
私が歩き始めると、それに気づいて慌てて剣持も着いてくる。確かに知らないところで一人ぼっちは寂しいもんな。いいよ。一緒に居てやるよ。と某魔法少女風に納得して、二人で横並びで歩く。
お互いに一言も発さず、行く宛てもなくブラブラしてみる。その静かな空間が心地いい。
「あ、A。ここ崖の上みたいですよ」
ボーッとしていると、横から肩を軽く叩かれた。剣持が指さした方を見ると、バリケードが張られていた。どうやら、本当に崖の上の様だ。
「行き止まりか…」
「見下ろせば何か分かるかもしれないですよ?」
「死にたいの?まあでも確かに。バリケードどかすか」
二人でバリケードを二枚程どかした後、落ちないよう気をつけて見下ろしてみて、絶望した。
「…ぇ、何コレ…」
「は…?」
そこには、一面紫色の腐敗した土地が広がっていた。
「はは、良かったじゃん。お前のイメージカラーだぞ」
「全くもって良くない。嬉しくない一面紫色初めてだわ」
「そもそも一面紫色なんて状況そうそうないでしょ」
「あー、ライブの時以外無いわ」
「そういえばソロライブ良かったぞ」
「今更過ぎるだろ。一年以上経ってるぞ?…まあありがとうございます」
「あら素直。…他に人居ないのかな」
「逆にこんな環境で生きてる奴が居ると思うか?」
「委員長なら生きてそう」
「あの人は…生きてそう」
人は死を悟ると一周回って冷静になり、雑談が出来るらしい。そんなタフさを持ち合わせていたなんて。
すると、前方から何か黒い影が猛スピードでこちらへ飛んでくる。
そのシルエットがハッキリ見えるようになると、私は何を考えたのか、当たり前のように言った。
「あ、ドラゴンじゃん」
「は?」
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作者名:ぴーすす | 作成日時:2022年1月1日 23時