11話 ページ13
「最近近くにカフェが出来たみたいなんだ。ケーキも美味しいけど、コーヒーも絶品なんだそうだよ」
よければ行ってみてごらん。と、正しく菩薩の様な微笑みで教えてくれた先生。
カフェの話を聞いた時、ちらりとAを見やれば、案の定子供のように目をキラキラさせて聞いていた。
ところが、どうだろう。
「ありがとな、先生。ほら、帰るぞ」
「は、はい！寂雷先生、ありがとうございました！」
「ふふっ…あぁ、お大事にね」
病室を後にして、
「待っとけ、動くなよ」
「は、はい！」
会計を済ませて、
「ん」
「あ、ありがとうございますっ」
扉を開けて助手席に乗せてやる。
…この間一向に、こいつの口から、行きたいだの連れてってくれだのという言葉は出てこない。
Aのことだ。どうせまた遠慮でもしているのだろう。
「…何をそんなにそわそわしてんだよ」
俺から”行こう”と言うことは簡単だ。
でも、それじゃあ意味がない。
「えっ…と、」
自分の口で、自分の意志を伝えられなければ、後々困るのはAだ。
助手席で縮こまっているAの頬に手を添え、ぐっと距離をつめる。
「さ、左馬刻さまっ…？」
突然のことに頬を染め、おろおろと視線を彷徨わせる様は加護欲を唆る。
「して欲しいことは、言わねぇと分かんねぇぞ」
薄紅色の澄んだ瞳を見つめ、滑らかな頬を撫でた。
欲しいものも、したいことも、全部全部俺にぶつければいい。
「聞かせろよ、お前の願い。全部、この左馬刻様が叶えてやる」
些細な、我儘とも呼べないようなものさえ我慢してしまうお前を、少しずつでいいから解いてやりたい。
「…あの、」
「おう」
促すように、目元にキスを送る。
ぴくりと肩を震わせるのが堪らなく愛しい。
…まずいな、一回じゃ満足できねぇ。
もう一度目元に、額に、頬に、欲望のままキスを振らせれば、
「左馬刻さまっ‼」
「んむ、」
顔を真っ赤にしたAに、口を手で覆われ、ぐっと押される。
「あああのっ嫌とかそういうんじゃなくてですね‼これ以上は…わ、私の心臓がもちません…」
…なんだその可愛い反応は。
理性を留めている俺を盛大に褒めろ。
最後にダメ押しとばかりに、口元を覆う掌に口付けて、本題に戻る。
「…で？何か言いたいことあんだろ？」
「…寂雷先生が言ってたカフェ、一緒に行きたい、です…」
観念したように、ようやく口を開いたA。
よく出来ました、というように、柔らかな唇に口付けを落とした。
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和三盆糖(プロフ) - 香織さん» 閲覧、コメント誠にありがとうございます。ベタ甘な左馬刻さまが刺さったようで嬉しいです…!!マイペース更新にはなりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです。 (2021年6月6日 17時) (
レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
和三盆糖(プロフ) - さちゃんさん» コメントいただいたのに直ぐに気付くことができず、お返事出来ておらず申し訳ございません。かなり時間が経ってしまったのでもう届かないかもしれませんが…閲覧、コメント誠にありがとうございます。どうにか完結まで頑張りますので、また遊びにいらして下さい。 (2021年6月6日 17時) (レス) id: 4f53f84ba0 (このIDを非表示/違反報告)
香織(プロフ) - 久々の更新ありがとうございます！とても気になる展開と安定の左馬刻さまっぷりで最高です。続きを楽しみにしてます！ (2021年6月5日 23時) (レス) id: be1cefb69b (このIDを非表示/違反報告)
さちゃん(プロフ) - とてもすきですT_T更新楽しみにしています>_< (2020年4月6日 1時) (レス) id: ffa613b322 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：和三盆糖 | 作成日時：2019年3月3日 19時
