K 3 ページ3
局の屋上。
夜だし、俺らの他には誰もいない。
久しぶりの藤ヶ谷との時間。
「今日はもう、あがりかよ？」
「いや、もうすぐドラマの撮影に戻る」
「そっか」
また、玉と一緒か。
「北山…俺さ」
「ん？」
「…北山が、好き」
風に飛ばされそうなくらい小さく呟いた言葉は
俺の胸にしっかりと刺さった。
「……ふ…藤ヶ…谷…」
これは、夢…か？
寒い屋上にいるのに、体が熱くなっていく。
「…なんかさ、ずっと北山と居たのに
こんなに北山と一緒に居られないなんて…
考えてもなかった。
デビューしても２人で今まで通りだって…
隣りには北山がって…」
俯いたまま、俺に伝えられる言葉。
なぁ、藤ヶ谷。
同じこと、思ってたんだ？
…おまえの“好き”は、
俺と同じ“好き”なのか？
「俺…も…」
「え？！」
笑顔で俯いていた顔を上げ、俺を見る。
その顔を見た時、ハッとした。
…わかった気がした。
事務所の企み。
藤ヶ谷のこんな可愛い笑顔、
俺は好きだけど、
セクシーさとかで売って、
笑顔は他のメンバーに任せるには
テレビで見せちゃいけないんだ。
一線引いて、クールさを出して
藤ヶ谷と俺たちとの線引きをし、
特別感を出す。
…藤ヶ谷は俺と居ると
きっとこの笑顔をテレビで出してしまう。
無意識で、幸せオーラを飛ばすだろう。
そういうことか。
それも含めての、
“北山と藤ヶ谷の接触は少なめに”
だったんだ。
「……北山？」
動きの止まったままの俺を藤ヶ谷が覗き込む。
…俺らがうまくいくのは、グループの為にはならない。
「…でもさ、デビュー出来たし」
藤ヶ谷が俺のことを好きだって言ってくれたのは、
嬉しいなんてものじゃなかった。
でも、
俺らは始まったばかり。
ここからなんだ。
「…北山？」
「俺らは、このままでいなきゃいけないんだよ」
このまま、変わらず。
今までみたいになれなくても
同じメンバーには変わりない。
「………わかった、そっか」
「ん」
傷ついた顔。
ごめん。
でも、こうする方がいいんだ、きっと。
こうするしか…ない。
これから先、
俺らの未来を守るには、
これが1番いいんだ。
藤ヶ谷が屋上から去る。
こうするのが、正解なんだ。
.
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作者名：咲良
| 作成日時：2017年9月17日 14時
