F 6 ページ6
「藤ヶ谷、もう帰るの？」
「あぁ」
「そっか。
じゃ、お疲れ」
楽屋のドアノブにかかる北山の手。
誘う予定だったのにな。
このまま、バイバイか。
でも、北山が喜んでくれてよかった。
…ん？
ノブに手をかけたまま、動かない北山。
どうしたんだろう？
「あのさ、腹減らねー？」
くるっとこちらを向いて
「見つけてくれたお礼に、飯行かねぇ？」
え？！
本当に？！
まさかの北山からのお誘い。
「あ、用事ある？」
すぐに答えなかったから、心配そうに聞かれる。
「なっ…ないっ！」
ぶんぶん首を左右に振る。
「じゃあ」
「行くっ！」
もちろんっ
俺の食いつきに苦笑してる。
あぁ、俺…格好悪。
余裕なんてなくなる。
だって、こんな機会、考えられない。
「じゃあ行こうぜ〜！
藤ヶ谷、何食べたい？
肉〜…じゃねぇな。
和食出してくれる居酒屋とか、どう？」
ニカとのこんな会話なら聞いたことある。
それを俺としてくれてるなんて…。
「…藤ヶ谷？
無理になら、やめとく？」
やめる？！
いやいやっ！！
「食べたい！
北山のおすすめのとこ、行きたい！」
俺は乙女か！
キングとか言われてるくせに
プラベはこんな乙女だなんて。
むしろ、北山の方がキングみたい。
「うまいもん、食わせてやるよ」
俺に向かって微笑んでくれるなんて、何年ぶりだろう。
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作者名：咲良
| 作成日時：2017年8月11日 1時
