それが嘘だと気付いたら ３

K 71 ページ20

ソファーに体を預け、座ることしか出来ない。


どうして今、ココに藤ヶ谷がいないんだろう。


本当なら、この部屋に藤ヶ谷と戻って来てたはずだったのに…。



ひとりの部屋ではあったけど、


藤ヶ谷と一緒に居るようになってからは、いつも２人だった。


２人でいるのが当たり前になってた。



今更ひとりになっても…



「広い…」


出た言葉は誰にも聞かれることなく、消えていく。



なんで俺……


…なんで好きな人がいるなんて言ってしまったんだろう。


とにかく、これ以上入り込んでほしくなくて、

俺には関わってほしくなくて伝えた。



藤ヶ谷が居るかもなんて、考えもしないで。



なんで…


なんで、あの時……っっ




そして、藤ヶ谷は…



…ずっと想ってる人がいたんだ。



俺に少しは惹かれてくれてるなんて…


なんて自惚れてたんだろう。




俺は代わりに過ぎなかった。



俺の好きな人は藤ヶ谷だって伝えようと思ったのに

伝える前に振られた。




「…情けねぇ」



せめて、気持ちだけは伝えるべきだった？


10年以上拗らせて…何やってんだろう。



でも…


俺が本気だったなんて知ったら

藤ヶ谷は後味悪いよな。





好きな時に抱きしめて


好きな時にキスして…


あの温もりを知ってしまった。





もう、あの温もりを感じることはない。



藤ヶ谷…


それでも俺…



「諦めらんねぇ」



その言葉さえ、

誰にも聞かれることなく、消えていった。




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