【短編集】今始まる物語。【募集企画】 (ページ4)

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アメジストの巣立ち【柊紫苑】ページ4

ｓｉｄｅ紫苑

いつも通りの日だった

学校に行って、授業を受けて、学校から帰宅して。

俺が少し古い扉を開けるとその動作だけでｷｨｰと音がなった

「紫苑！！！！」

父が怒鳴りながら俺を呼んだ

反射的に肩が少し飛び跳ねてしまう

いつも大きな声を恥ずかしげもなく出している父だが、この怒鳴り声はいつもの非ではない

恐らく、何かがあったのだろう。

俺のいる玄関から父のいる居間までの少しの距離を父を待たせまいと、荷物を廊下に置いてできる限り早く行く

「あ、父さｰｰｰ」

「遅ぇぞ紫苑！！！！！」

ﾄﾞｽｯ!!

鳩尾を父に力いっぱい殴られた。

「アｯ…！」

日常生活では目立たない“服で隠れる場所”に父は決まって刃物や煙草、拳などを振り下ろしてくる

「痛”ｯ…？！」

殴られた反動で壁にあたった

痛くて立っていることができずに思わず床にズルズルと座り込む

痛みから気を紛らわすために、耐えるために自然と呼吸も荒くなった

「おい、紫苑大丈夫か…！」

悠真(兄)が心配そうな表情で駆け寄ってくる

「ﾊｧ…ﾊｧ……あ、ゆーま…？」

悠真の顔を見ると殴られた跡がある

「大丈夫…じゃねぇな…親父！話の前に紫苑の手当てを…！」

「うるせぇ悠真！！おら、立て紫苑！！！」

髪を掴まれ無理矢理立たされると目の前にグシャグシャになった1つの封筒が突き出される

そこには「政府」という文字が書いてあった

「…なにそれ…？父さん、俺そんなの知らなｰｰｰ」

「口答えすんじゃねぇ！！！」

瞬間、父の拳が俺の顔に振り下ろされる

ﾊﾟﾁﾘ

父の瞳と俺の”母親譲りのアメジストの瞳“がかち合う

するとﾋﾟﾀﾘと顔面スレスレのところで拳が止まった

「ﾁｯ…おい！悠真！この書類を俺が帰って来るまでに処分しとけよ…！俺は酒買ってくる、」

父は悠真に書類を投げつけるとすぐに財布とスマホをもって出て行った

沈黙。

「…あ、紫苑！怪我、手当てしよう！」

「でも悠真だって怪我…！」

「俺のは怪我に入らねぇよ、ほんとに…ごめんなぁ…お前ばっかり、俺も何かしてあげたいんだがな…」

本当に心からそう思ってくれているのだろう

本当に心から何かしたいと思ってくれているのだろう

「悠真、その気持ちだけで十分だよ…！ありがとう」

むしろこれは、優しい兄が、“家族”が傷つくところを見たくないという俺のエゴでもあるんだ

「悠真、ところでその封筒の中、何入ってるの？」

「ん？あ、あぁ、これな？これはｰｰｰ」