溺れる ページ20
ふと辺りを見渡す。
自分の手先すらも見えない光のない世界。
ふと上を見上げる。
ぼんやりと見えていたはずの光はもう見えない。
腕を動かす。
思い通りに動かない。腕に重りをつけられているみたいだ。
言葉を発するべく口を開く。
途端に"何か"が口のなかに入ってきた。
その"何か"は全身の穴という穴から押し寄せてくる。
急に息苦しくなって手足を動かす。
助けを呼ぶように声を出す。
耳に届いた音は空を切るそれではなかった。
ゴポ、と音をたてて口から泡が出た。
白とも透明とも言えるそれは高く高く上がっていく。
早く、出なければ。
早く、見つけなければ。
早く早くと心ばかりが急いて、足はなかなか前に進んでくれない。
苦しいのに、辛いのに、それでも意識を飛ばすことはなく、一歩一歩確実に歩いていく。
誰かの背が見えた。
その誰かは光のないこの世界でただ一人、光を纏っている。
すがるように誰かに手を伸ばしてその背を掴んだ。
ふっと、息苦しさがなくなる。
今までのそれが嘘だったかのようだ。
誰かが歩き出す。
背が離れていく。
また、息苦しさが戻ってくる。
嫌だ、待ってくれ。
そんな言葉は声にならずに泡だけが溢れる。
誰かは水の抵抗などないようにスタスタと歩いていく。
誰かをモタモタとした足取りで追いかける。
置いていかないで。
連れていって。
息が、出来ない。
淡い光が見えなくなってまた世界が暗闇に包まれる。
ゴポ、と白い泡だけが高く高く上がっていく。
─溺れる─END
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
八重(プロフ) - カシオペアさん» ありがとうございます!!まさかこっちまで読んで頂けるとは……その上コメントまで……本当に感謝します(*/□\*)上手なんて、恐縮です……(でも嬉しい)頑張ります!ありがとうございます!本当に!!! (2017年7月3日 21時) (レス) id: e19e44ac0b (このIDを非表示/違反報告)
カシオペア - ヒロアカの方を読んだので、こちらものぞいてみましたが本当に文を書くのが上手なんですね。一つ一つが短くて読みやすいです。更新、頑張ってください! (2017年7月3日 20時) (レス) id: 972c361b83 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:八重 | 作成日時:2017年4月24日 2時