頷く理由 ページ27
夜
真っ暗になっても館の住人はわいわい騒いでおりまして。
そんな中、不気味に蝋燭が灯る廊下を一人で歩いております。
物凄く怖い。
向かっているのはもちろん……
「あんのたぬき……ゆるさん……!!」
あの時、俺の部屋来いなんて言われなければ……
部屋の前につく頃にはもう足がガクガクしていて、泣きそうなのを必死に堪える。
3回ノックすると、気だるげに「おー、」と声がしたから「お邪魔します」と声をかけて中に入った。
「……なんで泣きそうな顔？」
「全部うらたさんのせいだからね」
「なんでだよ」
いつもはたぬきさんなのに、何故か二人きりの時はうらたさんと呼んでしまう。
皆の前で名前呼びをするのが恥ずかしいのかなんなのか分からないけど、どうしてもこうなってしまう。
「あ、なんで私呼んだの？」
「……お前の事、教えて欲しい。」
「、え？」
突然の言葉。
私の事？
人様に話せるほど良い人生を歩いてきてなんかいない。
ましてや、人様に教えられないくらいの蔑んだ人生。
教えられるわけなんてない。
「……やだ」
そのたった二文字に今私が持てる全ての負の感情が全面に出ていたと思う。
「これからお前は俺らと一緒に生活するんだ。その中で、Aのトラウマに触れて悲しませたくねぇんだよ。……俺らはな、Aの事、大事にしたいと思ってる、か、ら、、」
最後の方は顔が赤かった。
どうして、たった数日前にあった奴に、しかも人間にここまで優しくしてくれるの？
どうして、前はあんなに冷たい瞳をしていたのに、今はそんなに柔らかいの？
どうして、……凄く、泣きたくなるの、？
でも、だけど、…。
「言え、ないよ……怖いの、凄く怖いの、…もう、誰も失いたくない、！」
部屋を出た。
走って、走って、とにかく遠くに。
突如、左手首をきつく何かが掴んだ。
振り返ると、眉間に皺をよせたうらたさんで。
「……俺らは、絶対にどこにも行かない。」
ふわ、っと優しい柔軟剤の匂いがした。
「絶対、離さねぇから。」
ぶっきらぼうに私の頭を大きな手が撫でた。
ぐしゃぐしゃって。
「ゆっくりでいい。一つ一つで構わない。だから、Aの全部、教えてくれ」
頷いた。
頷くしかなかった。
だって、そっと見上げたうらたさんは少し、泣きそうな顔をしていたから。
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ての(プロフ) - Naoさん» ありがとうございます！頑張りますね、！ (2019年11月21日 22時) (
レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - 今までのアルバムのソロ曲の歌詞が出てきて、その歌詞のおかげでどんな状態なのかもよくわかって、すごく読みやすいし、面白いです！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年11月21日 16時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - ミトさん» 嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年11月18日 23時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
ミト - 初コメ失礼します。 読んでいて、すごく面白かったです!続き楽しみにしてます。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: d0ac5e5cac (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - Naoさん» 気づいて頂けて嬉しいです、ありがとうございます！ (2019年11月18日 22時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ての | 作成日時：2019年11月17日 21時
