困ること ページ22
ひとしきりトランプで遊んだあと、何故かさかたんに手を握られていた。
戸惑ってきょろきょろしていると、「俺の目、見て」って。
催眠術でもかけられるのかと思って、恐る恐るその目を見ると、瞳は窓の光を受けてきらきらしていた。
「……なぁ、もしも、やで？もしも、この館の誰かがAを好きだって言うたら、どないするん？」
へんてこな質問にため息が出そうになったけど、相手の顔は真剣だった。
「……わかんないよ、そんなの。愛されるとか、ないもん、今まで1回も」
小さいけれど、その声が相手に届くには十分だった。
「好き」
彼は私の目を見てはっきりとそう言った。
「……って言うたら、困る？」
なんていうフェイント。
「俺な、Aの困ることしたくないねん。」
「な、んで？」
「……やっぱり、笑ってほしいんだ。ずっと。毎日な、俺に笑ったとこ、見せて欲しいねん」
彼は弱々しくそう言った。
だけど私の手を握る力は少しも弱くなっていない。
「作りかけの感情で、Aが笑わなくなるのは嫌やから。」
澄んだ瞳の中に、困った顔の私が映っている。
それに知らないフリをしてさかたんは言葉を紡いだ。
「Aは、ずっとここにおって、ずっと笑っとってな？俺はそれだけでええねん」
「……う、ん、」
そう返事をするので精一杯だった。
だってさかたんは、泣きそうで、それでも嬉しそうな顔をしていたから。
「…ビー玉、ありがとね、すごくきれい」
「んーん！A、嬉しい？」
「うん、嬉しいよ、すっごく」
「ふふ、よかったー！！」
「っわ、!?」
視界が暗くなった。
さかたんの柔らかい匂いが鼻をくすぐった。
手だけじゃなくて、身体全体がさかたんに包まれていて。
太陽みたいに暖かくて、柔らかくて、眠たくなってしまう。
「…ねーぇー、さかたん」
「なぁに？」
「私、ね、愛って、怖いと思うの。でも、本当は違うのかな、」
「そうかもしれへんなぁ、」
その言葉を最後に、抱き締められるがまま、重たくなった瞼を閉じた。
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ての(プロフ) - Naoさん» ありがとうございます！頑張りますね、！ (2019年11月21日 22時) (
レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - 今までのアルバムのソロ曲の歌詞が出てきて、その歌詞のおかげでどんな状態なのかもよくわかって、すごく読みやすいし、面白いです！更新頑張ってください！応援してます！ (2019年11月21日 16時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - ミトさん» 嬉しいです！ありがとうございます！ (2019年11月18日 23時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
ミト - 初コメ失礼します。 読んでいて、すごく面白かったです!続き楽しみにしてます。 (2019年11月18日 23時) (レス) id: d0ac5e5cac (このIDを非表示/違反報告)
ての(プロフ) - Naoさん» 気づいて頂けて嬉しいです、ありがとうございます！ (2019年11月18日 22時) (レス) id: 8747774e09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ての | 作成日時：2019年11月17日 21時
