リゲルという男 ページ18
そいつは池から上がると、濡れた服や靴をその辺の気に干して、何故か作業中の私の横に居座り始めた。
「よぉガキンチョ！おれはリゲル！人呼んで吟遊詩人のリゲルだ！これも何かの縁だ、よろしくな！」
いや何もよろしくねぇよ。そう口に出したいのを堪え、『はあ、…』と中途半端な相槌を打つ。
別に人見知りってわけじゃないが、私自身がこういう屈託のなさそうな明るい人とは程遠い人種のため、距離感が分からない。
あと今作業中だから後にしてくんないかな。
ただ、この人のセリフは聞き捨てならなかった。�犇稷兄躾有瓩世辰董�そんなこと聞いたら、クソッ、私の心の幼い部分が嫌という程刺激されるではないか。吟遊詩人、響きからもうかっこいい。
「で、お前さんは？」
そう言ってリゲルは名乗りを催促してくる。
しかし困った、私は今世の名前を知らない。前世の名前を名乗ってもいいが、せっかく異世界転生したのにそんなつまらないことすんのか？と私の中にいるオタクの私が囁きかけてくる。確かにワンピの世界に現代名は浮くな……。
『……名前は、ないよ。気付いたらこの島にいたの』
「へー！遭難か？」
『違うよ！いや違くないけど！というかあなたも人のこと言えないでしょ！』
「おれのことはリゲルさんと呼べ。まぁおれの場合は遭難じゃなくて、恋のキューピット…かな」
『は？』
何やら決めポーズをしているリゲルに、何言ってんだこいつ、という思いを含んだ声が出る。どうしよう、この人頭沸いてんのかな……。
ワンピの世界って異常者が当たり前みたいな風潮あるけど、この人もその一人だったらどうしよう。
そんな心境が顔に出ていたのか、オイオイ、とリゲルは困ったような顔をする。
「おれは頭がコレなわけじゃないぜ。おれには相棒のメルトトゥルピーって名前の超オオワシ……いわゆる怪鳥がいるんだけどな、そいつが今日は恋人の超ハゲタカとデートだったみたいで、おれはそれを邪魔しないためにこの島へ降り立ったんだ」
『へー』
よく分からんがこの島に一時的に滞在するってことね。
別にこの島は私のものじゃないし、それ自体は知ったこっちゃないが……。
『…………ねぇ、いつまでここにいるの？』
邪魔なのだ。この男。
服はもう乾いただろうに、いつまで経ってもここを離れず、私の作業をただずっと眺めている。見られながらの作業は正直捗る気がしないし、端的に言って、クソ迷惑だった。
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AG2(プロフ) - うぇさん» ありがとうございます！可哀想は可愛いの裏返しですからね❤︎ (2022年8月30日 13時) (
レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
うぇ - 主人公…、強く生きろよ…いや好きですけど好き！！！ (2022年8月29日 17時) (レス) @page49 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - ニアさん» ありがとうございます！やっぱり幸せなだけじゃ物足りないですよね^ ^これからもじゃんじゃん不幸にしていきます！！ (2022年8月24日 7時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
ニア - これは主人公が幸せになろうとする度に不幸が襲ってくるパターンのタイプだ……リゲルが死んだところでちょっと泣いちゃった...とても面白くて読みやすい小説でした！！！ (2022年8月23日 23時) (レス) id: 6103ddda9f (このIDを非表示/違反報告)
AG2(プロフ) - おこげさん» ありがとうございます！これからもどんどん主人公を可哀想な目に合わせていきます！頑張ります！ (2022年8月18日 10時) (レス) id: 824802fbf5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ハラマゲオ | 作成日時：2022年8月6日 23時
