さすがに想定外

episode5 ページ6

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酒は呑んでも呑まれるな


こんな言葉がこの世にあるんだから、まあ世の中には“呑まれて”しまう人が大量にいるってことだろう。






実際、この宴が始まって3時間。

既に呑まれてる人がいる。時刻は夜11時。酔うにはまだ早い。宴はこれからだ。




「誰かお冷持ってきてー！」
「こっちのツマミ出来上がりましたァ」
「ちょっと誰よ！料理出し忘れて置きっぱの人」
「ちょっとそこのアンタお酌してきて！向こうで手が回ってない！！」



宴の裏は別の意味で大騒ぎである。

かく言う私も忙しなく、あっちへこっちへ行ったり来たりしている。



料理を持ってき、酒を持ってき、必要とあらばその他もろもろ用意する。誰かも分からないジジイに酒をつぎ、テキトーに話に相槌を打って、とりあえず男を立てる。

ニコニコと笑みを崩さず、何をされても文句は言わない。


いや、ホントに疲れる。


まじで疲れる。酒ぐらい自分でつげや。いちいち女を呼ぶな野郎ども。





今日ばかりは敵対派閥とか関係なく、使用人が一丸となって協力している。それほどまでに大変だ。



「はいこれ持ってって」
「了解しました」


一升瓶を渡されて、「お酌してこい」と遠回しに言われた。は〜〜〜ｯｯ！！ほんっと疲れますわこの仕事。この時ばかりは退職したいと思ってしまう。




(いつ来ても酒くさ……)



完璧な愛想笑いを浮かべて、とりあえず空のグラスについでいく。人数も人数のため割とすぐに一升瓶が軽くなっていく。




「A、ちょっとこっち来て」
「はい。ただ今」


どこかの席から自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。声の主は直哉様だ。一瞬辺りを見回すが、すぐに見つかった。上座にいるし、何より人に囲まれてる。


座っている彼の後ろに膝をつく。


「なんでしょうか」

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