さすがに想定外

episode11 ページ12

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「となると相手は直哉だな。……全く彼奴は…」
「と、当主様ッ……！どうかお願い致します。子は私が全責任を持って育てます。禪院家に迷惑をかけるつもりは一切ございません。ですから…どうか……どうかこの事は………！」
「気にする事はない、と言ったはずだ。少なくとも、その赤子を堕ろせとは言わんし、お前と赤子に害を与えるつもりは無い」

その言葉にほんの少しだけ安堵する。少しだけ、だが。


「だが、分からんな……たとえお前が生んだとて直哉はむしろ喜ぶだろう。嬉々としてお前を正妻に迎える可能性だって否定できん。少なくとも彼奴がお前と赤子を邪険にすることはないだろう。何故、直哉の元から離れようとする？」
「…今から話すことの一切を黙認すると誓ってくださいますか？」
「あぁ。誓おう」


呪術師の“誓う”は、少なくとも世間一般で使われるものよりも重みが増す。呪術師は滅多に“誓う”ことはなしない。だから、この場合、当主の言葉は信用できる。



「私は直哉様を主君として仕えることに不満は一切ございません。私の生涯の主君はあの方以外にありえません。……ですが、あの方と男女の関係になるのは…少々躊躇われると言いますか……」
「つまり、彼奴と結ばれたくはない、と」
「……不敬を承知で言うのではあれば、そういうことです」


直哉様が私をこんなことで切り捨てることは無いだろう、というのは分かってる。でも、やっぱり禪院家に正妻だろうが側室だろうが嫁入りするのはちょっと……ね？


「……よかろう。お前の辞意を承諾する。この件はあくまでも直哉の問題であり、当主が出る幕はないしな。お前の今までの働きを信用して何の条件も設けない」
「…！……ご寛大なお心に感謝申し上げます」
「そして、お前と赤子に一切の手出しをしないと誓う。が、直哉がお前をどうするか、に関しても一切の手出しはしない。要は何も手出しをしないが、手助けもしない」
「はい」
「せいぜい上手く立ち回るんだな矢羽A」





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