今日も今日とて39 ページ44
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「...で、紅茶の入れ方のゴールデンルールなんてのもあるんやけどな。」
「へぇ、そんなものまで...。本当に、お詳しいんですね。」
艶やかな煎茶色の髪を揺らし、楽しそうに語る彼は、どうやら相当な紅茶通らしい。
彼のためになる話を聞くうちに、私も楽しくなってきていた。
一通り趣味の話を終えた彼は、ふと思い出したように私に向き直り言った。
「そう言えば、中村さんは望んでこの場に?」
「.....え?」
あくまでも自然に投げかけられたその問いに、一瞬理解が追いつかなかった。
彼に視線を向けると、先ほどと変わらぬ表情で私を見つめていた。
.....読めない人だな。
「......いえ、帰省をした際に、両親が。」
「お、やっぱり。...俺と、同じだ。」
正直に答えると、帰ってきた言葉に思わず目を見開いて彼を見つめる。
おなじ、とはどういうことなのだろう。
彼の実家は関西だったはずだが...。
「.....久しぶりに電話掛かってきたと思ったら、早く結婚しろだの言われてしもうてな。忙しくてまともに帰れてない俺を案じて言うてくれたんは分かるんやけど..。」
私の疑問に満ちた目線で察してくれたのか、彼は語り出す。
どこか腑に落ちないような表情が妙に脳にこびりついた。
「せや、中村さん。あいつら分かるやろ。...貴女のコンビニによく来る、あいつら。」
いきなりでてきた常連客の話に、肯定の意を込めて相槌を打つ。
「よく、あいつらから中村さんの話を聞くんやけどな。」
「わ、私の話を...?それは、何故でしょう...?」
彼の言葉の意味がわからず、疑問を口にする。
私の言葉に、彼はやはりとでも言うような表情でゆっくりと言葉を紡いだ。
「中村さんは、あいつらのこと、どう思ってるの?」
「どう.....」
真っ直ぐな瞳に射抜かれ、萎縮する。
このような質問は、初めてだった。否、考えること自体初めてだったのかもしれない。
普通に見ても、彼らはお客さんだ。
なんの関係もない、ただの客と店員の関係。
そう思った時、胸の奥がチクリといたんだ。
この痛みは、何?
「私と、彼らは...店員と常連客。ただそれだけです。」
「...なら、そんなに辛そうなのは、なんでなん。」
静かに言われ、気づく。
随分と顔が強ばっていたようだった。
店員と客。ただそれだけのはずなのに
彼らとのひとときを思い出してしまうのは、何故。
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@Rino_emiは不人気でした。 - 完結おめでとう御座います!!星とコメつけました!!PKです!! (2019年4月3日 15時) (レス) id: f8b93f7332 (このIDを非表示/違反報告)
南野なつ子(プロフ) - ゆっくりみーさんさん» コメントありがとうございます!中村さん、可愛いですよね(自分で言う)彼女の人間性を捉えていただけているようで、とても嬉しいです...!短編集の方も、何卒宜しくお願い致します。応援ありがとうございました<(_ _)>! (2019年1月1日 2時) (レス) id: 2940700bbe (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりみーさん(プロフ) - 完結おめでとうございます!!中村ちゃんはほぼほぼ一目惚れみたいなかんじでした…なんだか素朴でツイてないけど、ナチュラルに、でも必死に頑張る中村ちゃんがとても好きです!!かわいい!かわいいです!!(二回言った) (2019年1月1日 1時) (レス) id: e42952b1a0 (このIDを非表示/違反報告)
南野なつ子(プロフ) - こむぎ@不透明じゃなくてもチームこーくさん» コメントありがとうございます<(_ _)>お二人共可愛すぎて、作中でどんな行動をとらせるか非常に迷います笑ご期待に添えるよう頑張って参りますのでどうぞよろしくお願い致します! (2018年12月26日 21時) (レス) id: 2940700bbe (このIDを非表示/違反報告)
こむぎ@不透明じゃなくてもチームこーく - ショッピロボロとか神の集まりですわぁ…((更新頑張ってください…! (2018年12月25日 15時) (レス) id: fce3d8ed6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南野なつ子(ちりん) x他2人 | 作成日時:2018年7月3日 22時