ねぇ、愛されヒロインさん。【歌い手】

寝言って実際そんなに出ない ページ19

まふまふside


ま「あれ、寝ちゃった……？」


気づいたときには、隣で寝息を立てていた。

その容姿は、光ちゃんと比べてしまうと、やはり劣っているように見えてしまう。


ダメだダメだ。

容姿で人を比べるなんて最低な行為だ！


でも、好きだから、なのかな。光ちゃんは、周りの人とは全然違う気がするんだ。


よく見てみると、サラサラな髪や、整った唇は、やっぱり双子なんだな、と感じさせる。


96「あれぇ、ほんとだ！寝るの早いよ〜！」

光「運んだ方がいいかな？」

ま「そうだね。」


96ちゃんはこんな状態だし、光に任せるわけにはいかないよなぁ。

……と、なると。


ま「僕、行くよ。」


体も比較的小さいし、いくら引きこもりといえど、きっと大丈夫だろう。


光「いーの？ありがとう！」


視界の端に、ひょっこりと僕の大好きな笑顔が顔を出した。

心臓がドクン、と大きく波打ったのが分かる。



ま「全然大丈夫だよ！」



さて、どうやって持とうか。

起こさないようしないと……


や、やっぱりお姫様抱っこ！？

安定するのはそれだろうけど……


ま「仕方ない、かぁ。」


周りに聞こえないくらいの小声で呟いた。



首の辺りと膝のあたりに手を添える。


ま「ちょっと失礼しまーす。」


その体は、驚いたことに、少し力を加えるだけで持ち上げることができた。

人を抱える、ということで、覚悟はしてたんだけどなぁ。


ま「軽っ！？」


ただ、この重さは、本当に危険なレベルかもしれない。

小柄なのもそのせいだろうか。


思い返してみれば、お店で食べた昼食も少しだけで、後は光ちゃんに全部あげていた。





気付いたときには、来たときと殆ど変わっていない、シンプルなドアが目の前に。

確か、ここだったと思う。


女の子の部屋に入るのは、ちょっと抵抗があるなぁ。

思い切ってドアノブを捻ろうとした時、Aさんが何故か顔を歪めた。


『……けて。』


寝言だろうか。

小さくてよく聞こえなかった。



次こそは、と握ったままのドアノブを捻る。

簡単な家具だけが置いてあって、やはりシンプルだ。


あまりジロジロ見るのは良くないよな。


ベッドにAさんを降ろす。



よし、用は済んだし戻ろう。
　




ま「おやすみなさい」





『…たい、やめて…たすけて…』


その声は、確かに眠っているAさんから発せられたものだ。

思わず、ドアへ向いていた足を止める。

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