引き立て役の私だって主人公になりたいとか思ったけど夏終わるし諦めよう。

31.また新しい夏が始まる。 ページ31

＊





「はは、じゃあ楽しみにしとくわ。……それじゃあ、またな、A」


『うん、また、いつか』






智洋とまた会えるのは、いつになるだろう。

もうわからないぐらい後かもしれないけれど、なぜか、またここで会える気がする。



智洋なら、どこにいても私を見つけてくれそう。

幼なじみパワーって、やつ。




智洋の姿が見えなくなるまで手を振ると、後ろから腰にまわってくる腕。

その正体は確かに小瀧さんの腕。






『っ、な、なんですか？』


「妬いた」


『……相手は幼なじみだったのに、ですか？』


「それでも男やん」


『だめなんですか？』


「あかん。A、可愛ええんやから」






よく、わからないけど。

なんか、妬いてる小瀧さん……可愛い。






「今日から俺の女やねんから」






少女漫画みたいなセリフ。

憧れてた"主人公"になれた気分。



初めてなれた主人公の相手が小瀧さん、って胸の奥がくすぐったくて嬉しくて。







『ふふ、』


「ん？」


『……いや、引き立て役終了だなって』


「引き立て役？」


『…………なんでもないですよ。好きです、望くん』






主人公になることを諦めた去年の夏。

新しい夏は、望くんと一緒に。






＊END＊

作者から→←30.引き立て役は。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す