ストロベリーの香りが重岡くんだと知ったら、推しになった。

38.幼なじみ以上 ページ38

＊





「ほれ、ココア」


『ありがとう、』


「落ち着いた？」


『……なんと、なくは』






ココアを受け取って、小瀧の隣に座る。

ちょっど日陰になってるここは、秋に近づく今ではちょっぴり肌寒い。



熱いぐらいの缶を握りしめ、さっきの姿が目を瞑れば映し出されてくる。

何度首を振っても、違うこと考えても、離れられなくて。




大きいため息をつくと、"幸せ逃げるで"って隣からプシュッと音がした。







『……もう、逃げてるよ』






ぐーっと飲む小瀧の手には、さっきと違った柄のコーヒー缶。

どんだけコーヒー好きなんだろう。






「前、逃がしてるの、自分の持ってる幸せおすそ分けとかなんとか言うとったやん」


『今は欲しいぐらいだよ。本当に』






あの時ため息ついたからなのかな。

ため息ついて幸せが逃げるのなら、もう一生、ため息なんてつかないのに。



いろんなこと考えて、また出そうになるため息をぐっと飲み込むと、

"じゃあ、そんな落ち込む瀬良に元気を分けたるよ"

小瀧はそういうと、体をこっちに向けて、抱きしめてきた。






『は、っ、ちょ、なに？』


「元気をおすそ分け」


『どういうことっ、』


「言葉のまま」






リズム良く背中を叩く手は、優しくて。

不安だった、モヤモヤしてた胸も、どこか晴れてくるよう。



"ありがとう"なんて言葉は、すんなりと出てきた。

小瀧は私の言葉を聞くなり、"どういたしまして"っと返した。






「なあ、瀬良？」


『……なに？』






抱きしめられたまま、耳元で話し出す。

あまりこの距離では聞かない、小瀧の甘ったるい声。


幼なじみって言っても、あまりに距離が近すぎかな。


そう思ってた矢先、






「瀬良と幼なじみとか、ただの腐れ縁とか、嫌やねんけど」






と、信じられない言葉が聞こえた。






「瀬良は俺の事、ただの幼なじみ、腐れ縁って思ってるかもしれへんけど……俺は、ちゃうよ。そんなこと、思ったこともあらへん」

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