33.才能と隣 S.side ページ33
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そんな佐藤さんからのグイグイは止まらず、台本ができるまでそれは続いた。
ちなみに台本ができたのは3日後。
3日もこの恐怖に耐えてたと思うと、すごいと自分褒めたい。
そして台本が1人1人の手元に届き、本格的に劇は始まった。
俺の出番は中盤からやから、セリフ覚えに集中する。
こういうの初めてやけど、セリフが驚くほどすいすい頭に入っていって、俺の出番が来る頃にはほとんどのセリフが入っていた。
「すごいやん重岡!出番前で覚えたん?」
『あ、まぁ。なんか頭に入ったから』
「成績優秀は違うなあ!羨ましいで!」
監督である演劇部の加藤がケラケラと笑いながら俺を褒める。
でも不慣れなせいか、セリフは覚えてても動きがわからんくて。
何度か加藤に教えて貰いながら、劇は進んで行った。
「しげ、お前サッカーより演技の方が向いてんちゃう?」
『んなわけないやろ、こういうの、なんか苦手やし』
「初心者にしては上出来やで?演劇部でもセリフ覚えるのに必死やのに、それを意図も簡単に……すげぇわ」
『そんな褒めんといて。なんもでぇへんよ』
"出さん代わりに演劇部入ってや!"っと熱烈なオファー。
やけど、サッカーは辞めるつもりないし、演劇とテレビで見るあの演技とはまた別なんやろうなって考えると、
入るのはちょっと躊躇う。
休憩に入り、ペットボトルを取り出して飲んでると、ストンと隣に座ったシンデレラ役の佐藤さん。
近すぎる距離に息がつまり、できるだけ……と思い、1歩左にずれた。
「すごいね、重岡くん。大絶賛じゃん」
『あ、まぁ……』
「演技してるところもかっこいいなんて、惚れちゃうよ」
三角座りして、膝に頭を乗せる佐藤さんは、こっちを向いて微笑む。
惚れる、って、そんな大袈裟な。
でも真面目に受け取ると相手のツボやってわかってるから、"そっか"って適当に流す。
「重岡くんってさ、今彼女いるの?」
『……おらへん、けど』
「じゃあ、好きな人は?」
そう聞かれて、黙り込む。
なぜか"いない"と口が動かなくて、数秒経ってから"いない"っと答えられた。
「そっか……なら、私、重岡くんの隣狙ってもいい?」
なんでさっき、すぐ"いない"って言えなかったんやろ。
瀬良さんの笑顔が頭に浮かんで、でもきっと気のせいやって頭を振って"あー、うん"っと適当に流した。
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ぽてとふらい。(プロフ) - ちぃのすけさん» コメントありがとうございます!1番…!その言葉だけでもう本当に嬉しいです…!これからも沢山お話を届けられるよう、めっちゃ頑張ります!次回作もよろしくお願いします! (2019年8月26日 22時) (レス) id: 9d94f1b87d (このIDを非表示/違反報告)
ぽてとふらい。(プロフ) - 凜憧さん» ありがとうー!なんかこれ書く前にこんな感じの実際にあって…笑 書きたくなって書いちゃった。凜憧も大変な時期に入るだろうけど、無理しないでね。慌てなくても大丈夫だから。私も二学期から本気出すぞーっ!笑 (2019年8月26日 22時) (レス) id: 9d94f1b87d (このIDを非表示/違反報告)
ちぃのすけ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!自分が今まで見たお話の中で一番大好きなお話でした。最後の重岡くんにめちゃめちゃキュンキュンしつつ、にやけを隠すのに必死でした(笑) こんなめちゃめちゃ素敵なお話に出会えて本当に良かったです。次回の新作楽しみにしてます! (2019年8月26日 19時) (レス) id: d270165aa7 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとう!いつも以上に最後の言葉がグッときて、今、前向きになろうって少しずつ状況を変えてるときだったから余計に響いて、なんかもう泣きそうになった。毎回のようにぽてには元気をもらってるし、勇気をもらってる。すごいなって改めて思った。更新お疲れ様! (2019年8月26日 19時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
ぽてとふらい。(プロフ) - しげつぐ。さん» そう?なんか、伝えたいことたくさんでごちゃごちゃになってしまったけど…ちゃんと私の言葉、届いてたのならよかった。うん!新作もまた頑張るね! (2019年8月26日 1時) (レス) id: 9d94f1b87d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽてとふらい。 | 作成日時:2019年8月7日 10時