キスの日。

3.diary ページ3

＊




「ん、おはよ、A」


『あ……おはよう、流星』





さっき心の中で噂をすれば、後ろから巨人藤井流星が登場。

相変わらずイケメンで、素晴らしいものですね世界も。





「まーた気難しそうな顔しとる」


『ふえ』






ぷにっと流星の人差し指が私のほっぺに沈み、ぐいぐいと力を入れてくる。痛い痛い。






「あのさあ、バレバレやで？」


『……何が』


「ヤキモチ妬いてますよーって、バレバレ。私だけ見てとでも言えばええのに」






流星はそんな簡単に口にするけど、私にはどれほどの勇気がいて、重いものなのか知らない。

その言葉ひとつで、大毅を困らせたくないから。


大好きだからこそ、遠慮してしまう。






『恥ずかしいから、言わない』






この言葉も、結局は自分隠すための嘘……だなんて、きっと流星は気づいてる。

ぷにぷにと触っていた手を落として、"あっそ、可愛くないなあ"なんてふにゃふにゃ笑う。


可愛くなくてすいませんね、所詮私はそんなんですよ〜だ。






「まぁ、Aの勝手やけどさ」


『……ん』


「しげも案外、寂しがり屋やで？」


『……わかってる』


「あれでも、Aとの距離感に未だ悩んでたりするから」


『うん、』


「好きぐらいは言うたれや」


『…………無理』






"すぐ断んなや"

ぺし、っと叩かれるけど、気にしない。


無理なものは無理。大毅が悩んでるっぽいのはわかってるけど、1歩が踏み出せないから。







『とりあえず、行こ』


「え、しげは？」


『どうせ女の子と来るんでしょ、知ってる』


「ははっ、また素直やない。寂しいとでも言って俺に助けを求めればええのに」


『生憎私はそういう性格じゃないの』






教室まで続く廊下。

隣は大毅ではないけれど、肩を並べてゆっくり歩いて進んだ。

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