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御影くんに部屋まで送って貰うため階段を登っていた途中、寝てる間に身体が冷えたのかくしゃみが2回程出た。
彼は呆れたように笑いながらこちらを振り向いて、ほら言わんこっちゃないと着ていたジャージを肩にかけてくれる。
今さっきまで御影くんが着てたからか、袖が少し余るジャージは彼の体温で温かい。
『……?どうしたの?』
肩から滑り落ちないよう、チャックの部分を肩手で掴んでいると前から熱い視線を感じて顔を上げた。
そこには、片手で口元を抑えながら顔をほんのり赤くする御影くんが。
「……いや、いいなと思って」
『……なにそれ。なんかヤダ』
「え、ごめん、っや、寒そうだったからさ
別に変な気持ちがあったとかじゃないからな!?」
あまりに必死に否定するものだから、おかしくてつい笑ってしまう。
確かに、いくら施設内だとは言ってもこの時期にTシャツ一枚は肌寒かったかと自分の行動を反省した。
ただ、そんなことにまで意識が回らないほど余裕がなかったのも事実だ。
『ねぇ御影くん』
「ん?」
『…さっきから思ってたけど、なんで手繋いでるの?』
「……嫌だった?」
『いや、別に、嫌ってわけじゃ』
ないけどさぁ
「じゃあいいだろ」
でもそんな耳赤くされたら、こっちだって反応に困るんですけど……
手汗かいてないかなとか、変な心配しちゃうし。
心ではそう思いつつも、繋がれた手は心地いい体温で。離したくないと感じてしまったのも嘘じゃなかった。
結局、部屋に着くまで手は繋いだまま。
『…じゃあ、上着ありがとう』
「おう」
『待って、やっぱ返したくない』
「え?」
『返したら御影くん、匂いとか嗅ぎそう…』
「はぁああ!?ばっ、嗅ぐわけないだろ!」
ぶわっと彼の顔が炎のように赤くなる。
やっぱり御影くんって面白い。
『ばか。冗談に決まってるでしょ。…ふふっ』
「な、タチ悪いぞお前!今のはAが悪い!」
『ごめんってば』
自分では抑えてたつもりが出来ていなかったらしく、顔に出てんぞ!と上がったままの口角を指摘されてしまった。
「……明日一緒に探してやるって言いたいけど、今俺崖っぷちでそんな余裕なくて…」
『ううん、いいの。そう思ってくれただけで嬉しいから』
その言葉にほっとしたらしい御影くんは、よかったと零しながら力無く笑った。
『ありがとう』
おかげで、今夜は安心して寝れそう。
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ごりらに憧れてます - ちょっと控えめに言って神です。語彙力めちゃ高ですし……小説家なれると思います。応援してます!!最高でした〜 (1月19日 7時) (レス) @page43 id: 930e13de40 (このIDを非表示/違反報告)
黎明(プロフ) - 話の構成が上手すぎて引き込まれました…!神作品を有難う御座います! (10月10日 13時) (レス) @page22 id: 96c5df6fb7 (このIDを非表示/違反報告)
時雨、ときどき猫。 - 私、最後の「彼との幸せな〜」を呼んだ瞬間、大泣きしました。枕に顔うずめてたら親に笑われました(笑)本当に心が温かくなる話でした!これからも投稿頑張ってくださいね! (6月5日 21時) (レス) @page49 id: 5c49e2991a (このIDを非表示/違反報告)
ルナ - すっごい泣きまた!本当に素晴らしい作品をありがとうございます! (5月21日 0時) (レス) @page49 id: e67944ae95 (このIDを非表示/違反報告)
ヒラコ - 素敵なお話をありがとうございました。ツナさんの暖かい気持ちに感動しました。生きることは決して楽しいこと、美しいことばかりではないけれども、それらはいつか糧となり実を結ぶのだと思います。私もいつか生きていて良かったと思える日が来るよう今を生きます。 (2023年4月2日 2時) (レス) @page49 id: 488b484064 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ | 作成日時:2023年1月28日 16時