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「洗濯すんの?じゃあこれシャツついでに洗っといて」
「あちょっと投げないでよもう…」
あ、まただ
この甘いブーケの匂い。
この香りを嗅ぐ度に、私とは真逆のあの天真爛漫な笑顔が頭をよぎる。
悟は昔からある女の子のことをずっと大事にしている。
傍若無人で人を蹴散らすのが大好きなあの悟が、唯一彼女のことだけは蝶よ花よと丁寧に扱っていた。
だから学生の時、私は本気で悟はあの子のことが好きなんじゃないかとずっと思っていた。
気になってなんとなく聞いてみたら「あいつはそんなんじゃねぇよ」ってはぐらかされたけど、あの大切な光を見つめる眼差しはとてもじゃないけどそんなんじゃない子にするようなものではないと思う。
特別感
彼女と悟の関係性を表すのにピッタリな言葉だ。
従姉妹で幼なじみだという二人は、二人にしか出せないような独特の雰囲気がいつもあった。
加えてどちらも顔は良いから、またその感じを加速させていたのかもしれない。
彼女が悟の隣に立つとまるでパズルのピースがハマったかのようにそこだけ輝く。
まるで絵画のように儚くて、しなやかで、
婚約者の私でさえ、あの子の方がずっとお似合いだと思った。
香水と同じ、花を纏ったような可憐な子。
うちの柔軟剤を使っても、悟のシャツにはまだ別の甘さが残ってるように感じる。
香りは記憶に残りやすい。
「何してんの」
心臓が止まったかと思った。
気がついたら悟が、背後に立っていたから。
「…洗濯、終わったから…部屋に置いとこうと思って」
「そ。ドーモ」
「ん」
まだ鳴り止まない胸を抑えながら自分の部屋に駆け込む。
後ろ手でドアを閉めて見渡せば、そこには最低限のものしかない質素な部屋。
最近買え変えたばかりのディフューザーはあっという間に馴染んで、今ではその香りは感じられなくなってしまった。
たまに近づくと香るくらい。
香りは溶け込む。
自分では気づかないうちに。
だから、悟も痕跡を消せなかったのかな
悟の寝室にあったあの甘い花の匂いは、間違いなくあの子のものだった。
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ちょろび(プロフ) - 続き読みたいです! (3月11日 16時) (レス) @page31 id: 2e1f3655fb (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - 結祈華さん» 結祈華様もどうかご無理なさらず💦陰ながら応援しております☺️ (9月13日 0時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - 結祈華さん» 素敵なコメントありがとうこざいます!私もちょうどさっき、面白いな〜と読んでいた五条さんの作品があったのですが、作者名確認させて頂いたところ結祈華様のものでした!楽しいお時間ありがとうございます!✨これからもどうか一緒に頑張りましょうね! (9月13日 0時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
結祈華(プロフ) - 東リベ作品連載時にも読ませて頂いた者です!やはり素敵な作品の正体はツナ様でしたかと納得してしまいました!ストーリー構成や場面が想像出来る読みやすい素敵な文面、どれをとっても最高です!ツナ様の無理のないペースで更新頑張って下さい!応援しております(^^) (9月5日 23時) (レス) id: e171bf7202 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - えのきさん» こちらこそ読んでくださった上にコメントまで書いて頂きありがとうございます😭✨️私もえのき様のお言葉で元気もらいました🍀もっと活力になれるよう頑張ります! (9月5日 15時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ | 作成日時:2023年8月26日 18時