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もしも、
もしも今過去に戻れたら
その時は多分、家族が路頭に迷おうが悟とは結婚はしない。
それと何時間待とうが絶対にタクシーを待つ。早く帰れるからって人通りの少ない道は歩かない。
「……歩いて帰るか」
あの時もそうしていたら……
今頃私は、血を流しながら汚いアスファルトに横たわっていないだろう。
角を曲がって、ネオンに光り輝く繁華街が細長い道の先に見える路地に入ったときのこと。
前から頼りない足取りで歩いて来た人に、若干不審に思いつつもそのまま足を進めていた私は、すれ違いざまその男性に腹部に包丁を深く刺された。
風のような速さ
顔を確認する間もなかった。
その慣れた手つきに一瞬呪詛師である可能性を考えたが、彼が過ぎ去っていく道からは呪力は感じない。
だとしたら何か、私に恨みでも抱く人にやられたのか……
けれど当たり障りなくがモットーな私には思い当たる節はない。
過去の経験上、それ以外で一番可能性があるとしたらそれは五条家の権力を狙う人。
こればかりは私の予測できない領域なので納得もいく。
と、ここまでが地面に頭を打ち付けるまでの出来事。
「ぐ、ぁ……」
まずい……刺されたところから血がどくどく流れていくのが分かる。息もちゃんと吸えないし、手足も冷えてかじかんできた。
視界も、段々とぼやけてく……
……これが、最後なの?
人生をかかげて、たくさんの人を救ってきた末路がこれだとしたら、私の命はあまりにも呆気なさすぎる
見合わなすぎる……っ
確かに呪術師はいつ死ぬか分からない。何かと気にかけていた後輩のようにある日突然居なくなるかもしれない。この世界の理不尽差に気づき自分の存在価値が分からなくなって姿を消すことも。
だけど私は、それすらならなかった
神様はどれだけ私が嫌いなんだろう
辛うじて動く右手で、最期の余力を振り絞ってケータイのキーボードを押す
一度めは出なかった
お願い……ともう一度天に祈ったところで、いつもより一段と低い声がスピーカーから聞こえる。
最初に聞こえた舌打ちに、気づけば目頭が熱くなっていた。
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ちょろび(プロフ) - 続き読みたいです! (3月11日 16時) (レス) @page31 id: 2e1f3655fb (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - 結祈華さん» 結祈華様もどうかご無理なさらず💦陰ながら応援しております☺️ (9月13日 0時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - 結祈華さん» 素敵なコメントありがとうこざいます!私もちょうどさっき、面白いな〜と読んでいた五条さんの作品があったのですが、作者名確認させて頂いたところ結祈華様のものでした!楽しいお時間ありがとうございます!✨これからもどうか一緒に頑張りましょうね! (9月13日 0時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
結祈華(プロフ) - 東リベ作品連載時にも読ませて頂いた者です!やはり素敵な作品の正体はツナ様でしたかと納得してしまいました!ストーリー構成や場面が想像出来る読みやすい素敵な文面、どれをとっても最高です!ツナ様の無理のないペースで更新頑張って下さい!応援しております(^^) (9月5日 23時) (レス) id: e171bf7202 (このIDを非表示/違反報告)
ツナ(プロフ) - えのきさん» こちらこそ読んでくださった上にコメントまで書いて頂きありがとうございます😭✨️私もえのき様のお言葉で元気もらいました🍀もっと活力になれるよう頑張ります! (9月5日 15時) (レス) id: 4b3554dc38 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ツナ | 作成日時:2023年8月26日 18時