第五話 ページ7
「今日、任務に行くから」
ある日、昼ご飯を食べている時、唐突にそう言われた。思わず箸を止め、むいくんを見つめる。
え…任務って鬼殺隊のだよね?そんな軽く言うものなの…?
「…一応、伝えといた方が良いと思って」
ポツリと呟き、むいくんは茶碗に残っていた最後のご飯を口に入れた。一足先に食べ終えたむいくんもは、ゆっくりと立ち上がりいなくなってしまう。残された私は、暫く呆然としていた。
…大丈夫、だよね…?むいくんは強いし、万が一なんてある筈がない。
それでも何故か、胸が騒ついて落ち着かなかった。
むいくんから遅れる事数十分。私は空になった食器を片付けた後、彼を探す。
むいくんは縁側に座って空を見上げていた。私は彼の隣に行って同じ様に腰を下ろす。
『…むいくん…。私、待ってるね』
その言葉に、空から私へと視線を移したむいくん。
『ちゃんと無事に帰って来たの、自分の目で見るまで待ってる』
「……そんな事しないでさっさと寝てなよ」
むいくんは眉根を寄せて言った。迷惑そうな顔をしているが、私はもう決めたのだ。
『寝て欲しかったら早く帰って来て』
むいくんは少し目を大きくした後、深い溜め息を吐く。
「…生意気」
『へへっ…知ってる』
「それに締まりのない顔」
酷いっ!と叫ぶ私をむいくんは面倒くさそうにあしらう。……酷い!!
『むいくんが隣にいるんだからしょうがないよ』
大好きな人の近くにいればニヤニヤしてしまうに決まっている。拗ねたように言った後、沈黙が私達の間に流れた。
…え、此処で無視ですか?泣きますよ?
頬を膨らませてむいくんを見る。むいくんは私と目が合うとすぐに逸らした。
「馬鹿じゃないの」
…照れているように見えるのは私の気のせい?
「…心配しなくても帰って来るから」
ぶっきらぼうだけど、優しさもあるって分かってる。
高鳴る胸をギュッと押さえた。
今の私はむいくんを、ただの推しキャラとしては見れなかった。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時