検索窓
今日:2 hit、昨日:36 hit、合計:160,377 hit

第四十一話 ページ43

『う…が……ぁあ…!』

言葉と言えない声を漏らしながら、手を振り払おうとするA。その力は、前とは比べものにならない位強かった。

「ーッA…!」

何度呼びかけてもまるで聞こえていない。

Aは身動ぎをした後、僕に目掛けて蹴りを入れた。その反動で後ろに吹き飛び、膝をつく。

「っげほ!…っ…は…」

「時透さん!!」

応戦しようと刀を抜く他の隊員達に、大声で静止の言葉をかける。

「来るな…!…っ絶対に斬るな」

「ですが…」

「もし彼奴を斬ったら、俺があんた達を斬る」

立ち上がってAを見つめる。間髪入れずにAはまた攻撃をして来た。

「A!もうやめろ!」

攻撃を躱しながら呼びかけ続ける。避けきれなかった攻撃を受け、体の所々に赤い線が浮かぶ。


「目を覚ませ、A…!!」



**



暗い。真っ暗だ。


深い、深い所に意識が持っていかれる。


もう…良いかな…。このまま眠ってしまおうか。



──────…!



…………?


な、に…?……声が…



──────…っ!…Aっ!!



この声……知ってる。私の…大好きな人の声。



…むいく、ん。…むいくん…!



意識が一気に浮上する。辺りは全く知らない場所。


目に入って来たのは、血だらけのむいくんだった。


叫びたくても声が出ない。私の体なのに、意志とは関係無く勝手にむいくんに向かって行く。


「A!」


傷を負いながら、ずっと私に叫ぶむいくん。それを見て全てを悟った。


あぁ…彼の傷は私がつけたのだ。鬼になったのに、殺さずに私を気にかけてくれているんだ。


むいくんの優しさが嬉しくて、悲しかった。


傷付けなくない。むいくんを手にかける位なら…死んだ方がマシだ。


『……ぅ、ぁ…』



むいくん…。私を殺して…。



一筋の涙が、私の頬を伝って落ちた。

第四十二話→←第四十話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (109 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
167人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。