第四十一話 ページ43
『う…が……ぁあ…!』
言葉と言えない声を漏らしながら、手を振り払おうとするA。その力は、前とは比べものにならない位強かった。
「ーッA…!」
何度呼びかけてもまるで聞こえていない。
Aは身動ぎをした後、僕に目掛けて蹴りを入れた。その反動で後ろに吹き飛び、膝をつく。
「っげほ!…っ…は…」
「時透さん!!」
応戦しようと刀を抜く他の隊員達に、大声で静止の言葉をかける。
「来るな…!…っ絶対に斬るな」
「ですが…」
「もし彼奴を斬ったら、俺があんた達を斬る」
立ち上がってAを見つめる。間髪入れずにAはまた攻撃をして来た。
「A!もうやめろ!」
攻撃を躱しながら呼びかけ続ける。避けきれなかった攻撃を受け、体の所々に赤い線が浮かぶ。
「目を覚ませ、A…!!」
**
暗い。真っ暗だ。
深い、深い所に意識が持っていかれる。
もう…良いかな…。このまま眠ってしまおうか。
──────…!
…………?
な、に…?……声が…
──────…っ!…Aっ!!
この声……知ってる。私の…大好きな人の声。
…むいく、ん。…むいくん…!
意識が一気に浮上する。辺りは全く知らない場所。
目に入って来たのは、血だらけのむいくんだった。
叫びたくても声が出ない。私の体なのに、意志とは関係無く勝手にむいくんに向かって行く。
「A!」
傷を負いながら、ずっと私に叫ぶむいくん。それを見て全てを悟った。
あぁ…彼の傷は私がつけたのだ。鬼になったのに、殺さずに私を気にかけてくれているんだ。
むいくんの優しさが嬉しくて、悲しかった。
傷付けなくない。むいくんを手にかける位なら…死んだ方がマシだ。
『……ぅ、ぁ…』
むいくん…。私を殺して…。
一筋の涙が、私の頬を伝って落ちた。
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uru(プロフ) - 愛NAさん» ありがとうございます!自分ではまだまだと思っているのですが、そう言って下さり嬉しいです!!これからも頑張ります! (2020年8月18日 19時) (レス) id: 275269a074 (このIDを非表示/違反報告)
愛NA(プロフ) - 小説の書き方上手過ぎませんか…??ちょっとシリアスだったり面白かったり、何かもう色々と凄って思いました。陰ながら応援させて頂きますね…! (2020年8月18日 18時) (レス) id: d66500f3cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:憂流 | 作成日時:2020年8月2日 15時