境界線。肆【時透無一郎】

＊ ページ14

「おい、無一郎。目覚まし鳴ってる。早く止め……

って、何で泣いてんだよ」


非現実的なのに、どうしてかリアルで。あれを夢と言っていいのか、よく分からない。


''時は大正。そこでは、鬼と、鬼を狩る鬼殺隊っていう組織の隊員達が戦っていたの''


飽きる程一緒にいるってのに。…ずっと君に


『あっ！ゆうくん、むいくんおはよー！』


会いたかった気がするんだ。


『良い天気だねぇ。まさにお散歩日和！』

「…散歩…」

『そうだ！見て！むいくんに貰った桜色のリボン付けたの！似合う？』

「…リボン…」


既視感。……じゃない。これは…



『……むいくん？』


''…むいくん''



…ああ…。



''生きてくれて、ありがとう''



ああ……！



Aに向かって手を伸ばす。空を切る事なく、温かな肌に触れた。



『！？、むむむ、むいくん…！？何で急にハグを…！』

「…やっと会えた…。やっと触れる」



違う世界の記憶だろうと…どうだって良い。この気持ちは、決してあんた(・・・)のものじゃない。




「好きだよ、A」

『へ、…えっ…！？』



紛れもない、僕自身の気持ち。


変わらない気持ちが、ここにある。





僕の手を取り握ったAは、眩しい笑顔を浮かべた。





───────だから…どうかまた






『…私も。私もむいくんが好きだよ』







───────無邪気に笑う君と共に









境界線。完

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