第15話 本題はサッカーの中で ページ17
Aの言葉を聞き、野坂は笑い灰崎は呆れるようにため息をついた。
「そのことはもう解決したから気にしなくて良いんだよ」
「その時できなかったことを今後悔してどうすんだよ。その時できなかったなら、これからのことを考えろ」
Aも先程の謝罪を糾弾されるとは思っていなかった。だが、気にしなくて良いという言葉をもらえるという確証もなく、不安はあった。
杞憂だったみたいだね、と呟いてAは下げていた頭を上げた。
『そうだね。うん……ありがとう。
さて!本題はこれからだよ!』
パンっと1つ手を打つと、Aは笑った。灰崎が音に驚き、野坂は安心したように微笑む。Aは野坂が持っていたボールを受け取ると、近くの開けた場所を指差した。
『サッカーしよう。野坂』
勿論、と野坂が答えると同時にAは開けた場所の方へと緩やかな坂を降りていく。灰崎も野坂に手招かれて渋々した会った感じでついてきた。ゴールもない、なんなら線すら引かれていなかったがAはそれでも嬉しそうにボールを蹴り始めた。
『野坂達が雑誌のインタビューに行ってる間に、考えてたんだけど、多分僕が人に入り込むためにはサッカーをしなきゃいけないんだよ』
「はぁ?どういうことだそりゃあ」
野坂がボールをキープしているAに向かう。ボールを取ろうとする野坂、キープし続けようとするA。それぞれボールを見ながら巧みに相手に先手を打っていく。
『他のみんなに入った時もサッカーしてたし。多分、必要なんだよ』
「隙あり」
『うわっ!』
「灰崎君!」
唐突に振られた灰崎がそれでも十分な反射速度でボールに対応する。Aは灰崎に向かって走る。こうなれば灰崎も参加せざるを得ない。
単調な攻撃を鼻で笑いながら、器用にボールをキープする。だがAがスライディングでボールを奪い取った。
『野坂!次は取らせないから!』
望むところだ、と言いたげに野坂もすぐに対応する。左に、対応されれば右にと動きながらAは野坂を抜き去ろうと懸命に突破口を探る。灰崎はAの後方から妨害目的で迫る。
前には壁、背後には敵、試合をしているみたいだ。そう思いながらAは野坂の方へと、だが頭よりも高く高くボールを蹴り上げるとそのままボールに走り出した。
稲妻が走り抜けたような速さでボールに追いつき、やがて着地するとAは、してやったりというように笑った。
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作者名:匿名の人。 | 作成日時:2019年12月6日 19時