58:懇願(H) ページ10
無様に座り込んだ俺を、大祝が見下ろしていた。
喉仏に突き付けられた刃に、俺の手は情けなくガタガタと震えている。
「……私には、今の副長が人を斬る事は基より、自らのお命すら守る事は出来ぬと、そう思います」
刀を鞘に収めて、大祝が俺と目線を会わせるように路地に膝を付き、未だに震えの止まらない手を握った。
「私には、妖刀の恐ろしさと言うものはわかりません。しかし、現に、副長はお体とそのお心を侵されていらっしゃる。どう見積もっても、御一人で解決できるとは思いません
どうか、私に、貴方様を護らせては戴けませんか」
真摯な瞳が、俺を見詰める。
思わずすがってしまいそうな程、その言葉は魅力的だった。
思わずすがりたいと思ってしまう程、俺は参りきっていた。
けれど───俺には、大祝の手を取ることは、できない。
「……、大祝」
「はい」
「しばらく一人にしてくれ」
「……それでは私は、この先で御待ちしております」
「あァ……悪ィな」
名残惜しげに離れていった小さな手は、硬い、刀を扱う者の手だった。
去っていく大祝の背から視線を外し、煙草を咥える。
宛もねェ、これから手前がどうなるかも知れねェ。
何より、伊東が肩で風を切って歩くような場所に、大祝を置いておくのは危険だ。
───かと言って、俺は大祝を護ってはやれねェ。
ならば、と、煙を吐き出して、俺はまだ僅かに震えて見せる足を動かした。
──────大祝に背を向けて
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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
虎(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
虎 - 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時