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98:恩を仇で返すとは ページ50

「……大祝?隊服はどうした」


じとりと暑い夏特有の空気の中、副長は不思議そうに首をかしげて私を見た。


「今朝は非番を頂きました。
副長、少しお時間宜しいでしょうか」


敏感にも違和感を感じ取ったのか、副長は初めて対面したときのような警戒心をはらんだ目付きで私を睨み付ける。

地面に落とされた煙草から、細い煙が上がる。


「……転海屋の事なら聴かねぇぞ。どうせ総悟のヤツに何か吹き込まれたんだろ」

「わかっていらっしゃるのに、行かれるのですか。
……ミツバさんは、貴方が心よりお慕い申し上げたお相手ではないのですか」

「そんな下らねぇ事を言いに来たなら失せろ」


ギロリと鋭い視線に、私は途端に苦しくなる。
沖田さんから聞いてしまったのだ、副長がミツバさんをどれ程想っていたのか、ミツバさんが、副長をどれ程想っていたのか。


「下らない……下らない、でしょうか」

「ああ、仕事に私情を挟むなんざ許されることじゃねぇ。いいか大祝。現場じゃ迷ったヤツから死んでいく」

「ならば私は今此処に立っては居ないでしょうね」


下がってしまっていた顔をあげて、真っ直ぐ副長を見詰める。

迷ったヤツから死んでいくのならば、それなら私はもう随分前に死ねていたことだろう。


「戦場では、弱い者から死んでいく。迷いがあろうと無かろうと、それが事実です」


刀の鍔に指をかける。
瞬間、空気がずしりと重くなり、副長からは明らかな殺気が滲み出る


「そいつを抜くなら、俺ァ容赦しねぇぞ」

「結構です。ただし私は、貴方を殺す気はありませんが」

「……ナメやがって」





合図は、蝉の声がやんだその一瞬だった



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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時

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