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90:おんぶ(K) ページ42

背中に背負った女が、飽きることなく話続ける


「うー揺れると気持ち悪い」

「呑みすぎた貴様が悪い。我慢しろ」

「桂さん冷たー」

「大体貴様と俺は敵だろう」

「えー、寂しいこと言わないでくださいよ」



小さく笑い声を漏らすソイツを背負い直す。
揺れた衝撃が気持ち悪かったようで額が肩に当てられ、口数が減った



「おい、大祝」

「それ、いや」


ぴしゃりと言い切ったソイツは顔を上げることなく言葉を続けた


「大祝、とか、中沢、とか、いやなんです」


いやいやと理由を話すつもりもなさそうな大祝……Aに、足を止める



「……A、吐くなら降りろ」

「吐きませんー、桂さんいーにおいする」


腕の力だけで首に巻き付き、顔を俺の髪に埋める。

首筋がチクチクして不快に思いながらも、もう一度Aを背負い直して歩き出す



「髪に顔を埋めるな、気色が悪い」

「白粉の匂い、お化粧の。あとお酒」


とーさんの匂いだ。

小さく呟かれた言葉に、胸がひきつるような感覚があった。

父親がオカマで無いとしたならば、コイツの父親は、きっと毎日色町にでも通っていたのだろう。


「……俺はお前の父上ではない」

「あ、それ、"桂さん"も同じこといってました」


"桂さん"もおんなじ匂いするんですよ。

そう言いながら楽しげに笑うAに適当に相槌を打っていれば、真選組の屯所が近づく。


「A、此処からは自分で帰れ」

「ん、ありがとうございました」


思っていたよりあっさりと飛び降りたAは、幾分か酔いが醒めたのか、それ以上何も言うことなく屯所へ足を向けた。

その背中を、呼び止める。

不思議そうに此方を振り返ったAが街頭に照らされている


「……土方は、お前の事を嫌ってはいないだろう。

少なくとも、アレが好意を持たぬ女に、世話を焼くような男には見えん。

お前は色々と考えすぎだ。たまには吐き出せ。……素面の時なら料金分くらいは話を聞いてやる」



にこり、と、その時Aが浮かべた笑みは、年相応の照れたような、飾り気の無いものだった









91:文通→←89:愚痴(K)



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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時

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