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87:好きな人(Y) ページ39

「なん、で、Aさん」


ふわりと柔らかい羽織に包まれて、思わず涙がこぼれた。
沈香の気品に満ちた香りがして、細い指が私の頬を撫でた



「すみません、こうなったのは私のせいですね……」



優しげな深い藍色の瞳が私を写している。
だらしなく泣き続ける私の背中を撫でながら、困ったように眉尻が下げられる



「貴女をキチンと家まで送り届けるべきでした。……嘘など吐かず、貴女と確り話し合うべきでした」

「わたし、わたし、好きです、Aさんのこと、」


するりと頬から手が離れる。
立ち上がったAさんはいきなり帯を解き、するりと着物をはだけさせた。

うっすらと筋肉の筋が見える腹。けれど体は女性特有の丸みを帯びている。
雪のように白い肌に幾つかの傷が走っているのが印象的で、私は暫く言葉を失っていた



「……これで、わかっていただけましたか?

私は、貴女の気持ちに応えることが出来ない。
貴女と私が女性同士だから。と言うわけではありません。
こうして、死地に身を置く以上、私は、誰かと共に生涯を過ごすことなど出来はしません。

貴女には貴女の幸せがある。それは、私と共になることとは、どうやら違うようです」

「Aちゃ、うわっ!?」



後から現れ顔を真っ赤にした真選組の男に気づくと、Aさんは素早く着物を整え、私を立たせた



「山崎さん。ユウリさんの事をお願いします」

「Aさん!」

「後でお団子でも食べながら、ゆっくりお話ししましょうね」




にっこりと笑みを浮かべたAさんは、ぬらりと妖しく光る刀を抜くと、音を立てて襖を開き現れた男に視線を向けた

その場にいる誰よりも華奢なその背中が、これ以上なく頼もしく、大きく見えた。


ああ、私の好きな人は、こんなにも、強く、逞しく、そして優しく美しい。






「……好きです、Aさん」









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みぃ(プロフ) - コメント失礼します!こちらの作品がとても大好きでいつも楽しく読んでます。更新頑張ってください。応援してます (2019年5月31日 19時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - れもんさん» 楽しみにしてます!私の考えなのですが、伊東さんは、もしかしたら愛情が欲しかったのかな?と思いました。 (2019年2月19日 23時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)
れもん(プロフ) - 虎さん» お返事遅くなり申し訳ありません。コメントありがとうございます!!伊東さん…確かに頭が良くて何と無く怖い印象があるのわかります…でも生い立ちもラストも切なくて……。真選組動乱編終了までもう少しですので楽しんでいただけるよう頑張ります! (2019年2月18日 23時) (レス) id: af4b9b062a (このIDを非表示/違反報告)
- 面白いです!私は伊東さんっていつ見ても少し怖い印象を持っています。 (2019年2月17日 20時) (レス) id: f0c523c988 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年2月13日 0時

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