103:目覚め ページ5
「ん───?」
藺草のかおり。
木目調の低い天井と、柔らかくぽかぽかした日差し。
最近は猛暑だったと言うのに珍しいな、何て考えながら身体を起こした。
「……あれ…ここ…」
屯所じゃない。
けど、凄く懐かしい。
薄い布団から抜け出して、障子を開けば、綺麗に整えられた庭。
この光景は────
「よかった、目覚めたか、Aさん」
ふわ、と、白粉の香りがして思わず視線を向ければ、やはり懐かしい顔があった。
「か、桂、さん?」
「ふふ、そんなに驚いた顔をされるとは思わなかった」
死人でも見るようだな。と笑った桂さんに、今までのことは嘘だったのかしらと目を白黒させる私
「いえ、あの、わたし、」
混乱する私に、ぎしりと床板を軋ませた桂さんは、変わらず短い私の髪に指を絡めて、優しげに笑みを浮かべた。
「あれから半年…よく帰ってきてくれた」
「あの、」
「高杉さんに会ってやってくれないか?今はまだ無理でも、近い内に……君がいなくなって一番心配していたのはヤツだからな」
勿論私もだがね。
相変わらず父親かと言いたくなるような包容力溢れる言葉にくらりと目眩がする。
今までさんざん沖田さんに罵られてたからなぁ…
あぁ、そう言えば銀時さん、凄く心配してたな、ミツバさん、どうなったんだろう、局長にお礼もいってないし、それに……
「Aさん?」
「へ、」
「やっぱりまだ顔色が優れないな。もう少し休んでいるといい、弥兵衛に何かつくってもらおうか」
そう言うと桂さんは私を布団へ寝かせて待っているようにと優しく言って、部屋を後にした
……あれが夢だったなんて、信じられない。
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みぃ(プロフ) - 続編おめでとうございます!これからの展開がすごっく楽しみです!これからも頑張ってください。 (2019年8月13日 23時) (レス) id: d77d134be6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2019年8月12日 14時