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空に靄がかかって、一瞬、自らの姿すらこの場から消えてしまいそうな感覚に襲われた。
煙草を吸う。という行為は、自分で自分をじわじわと殺していっているような感じがして嫌いだ、と、言われたことがあった
「げ、煙草かよ」
「ギアッチョ」
「お前なぁ……体壊すからやめとけよ」
匂いもつくし、特定されやすくなるぞ。そう言いながらも隣にならんだギアッチョ。
そう言えば彼とは仕事に行ったことはないが、彼もまた、ホルマジオやイルーゾォ、それからリゾットのような¨不思議な力¨を使うのだろうか?
「煙草は嫌い?」
「別に、好きでも嫌いでもねぇけど……」
言いながら顔をしかめるのを見て、私は笑いをこらえながら煙草の火を消した。
リゾットから「マナーだ」と言って持たされたポケットサイズの灰皿に、まだ長かった煙草を突っ込んだ
「そっか、他の皆は?」
「リーダーは仕事、ホルマジオは部屋、メローネは飲みに行って他は知らねぇ」
「ふぅん、ギアッチョは?何しに来たの」
「来ちゃ悪かったかよ」
「いいや、別に?ただ、外から帰ってきたなら私が煙草を吸ってることを知ってるだろうし、どうしてあんな反応したのか気になってさ」
このテラスからは、建物と建物の間から、通りが見下ろせた。
私がギアッチョを見つけたのは偶然だったが、それでも急ぎ足で歩くこの特徴的なパーマのかかった頭を探すのは、難しくはないだろう
「……チッ、」
「話したくないなら、構わないけど」
「その態度だよ」
「え?」
「その¨君たちとは関係ないですよ¨って態度がムカつくからよぉ、一言二言言ってやろうと思って来たのに、」
テメーが、そんな顔してっからよぉ。
そう言ったギアッチョの眼鏡に、私の顔が反射した。
彼が言うほど私が酷い顔をしているのか?そう聞かれればわからない。
お互いに気まずくなって、しばらく無言が続いた。
その内に、ギアッチョはまた舌を打って、私を振り返ることなく部屋へと戻っていった。
キン、と金属音がしてから、赤い炎が燃える。
私は再び煙草を口に咥えた。
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作者名:東雲出雲 | 作成日時:2018年7月1日 15時