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そうは言っても、
一度あの世へ行ってしまえば
もう戻ってこられないわけで…。
宇髄 「…?おい、時透。」
宇髄さんは、何かを見つけたみたいだった。
視線の先には、いくつもの紙の束があった。
一つだけ、
まだ折られていない、書きかけのものがあった。
僕の名前が書いてある。
これってまさか…。
時透 「…遺書?」
僕はそれを読み始めた。
A『時透無一郎様
貴方が最後です。
今までありがとうございました。
私は、貴方と出会えてとても幸せでした。』
時透 「僕の方こそ。
君に会えて、何もかも変わったよ。」
涙を流しながら、
君に聞こえるように声に出して伝える。
A『時透君は、私にとって特別な人だったよ。
ずっと前から。』
時透 「僕も。
というか…僕は最初からそうだったよ。」
A『時透君は、初めてお店に来てくれたお客さんで、
一番たくさん来てくれたお客さんで、
一番一緒にいた人だった。』
時透「僕は、何もかも初めてだったよ。
君ほど仲のいい友人はいなかった。
恋をしたこともなかった。
一緒にいて楽しいと思ったのも、
ずっとそばにいたいと思ったのも、
君が初めてだったよ。」
A『結局、一度しか逢引に行けなかったね。
こんな身体になっちゃってごめんなさい。
折角恋仲になれたのに。
時透君からもらった着物は、一度も着ていないんだよ。
それでも、全部宝物だよ。』
時透 「生まれ変わったら、またきれいな着物買ってあげるから…。
それ着て、一緒に出かけようね。
僕にとって、Aからもらったものはすべて宝物だよ。
あの湯呑も、
文も、
君との会話も思い出も、
…全部。」
A『時透君が遠くへ任務に行ってしまったときはね、
ずっと時透君で頭がいっぱいだったよ。
早く会いたいって毎日思ってた。
ごめんね。気持ち悪いよね。』
時透 「何が気持ち悪いの。
むしろ死ぬほど嬉しいから。
僕なんて、いつでもどこでも君のことしか考えてなかったから。
君が気持ち悪いなら、僕はそれ以上だから。」
A『私がいなくても落ち込まないで。
私のことは忘れてね。』
時透 「…そんなこと、できるわけがないでしょ。」
どんなに記憶がなくても、
君だけは覚えてたんだから。
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