2話 ページ2
目の前で咳き込む彼。
｢(そんなに驚くことか？)｣
銘柄言っただけなんだけどなあ、と私はやっと自分の煙草に火をつける。
私が愛用しているのは、ショッピじゃない方のピース＿＿ロングピースだ。
自分の周りでピースを吸っている人があまり居ないからか、もしくは同じピースにシンパシーを感じたからか。自分でもよく分からないが、気がついたら自分の口からその名が漏れていた。
彼はまだ自分の胸を擦りながら呼吸を整えている。
大変なところ申し訳ないけれど、ガラス張りの外に広がる青い空と、太陽の光で逆光になった彼の立ち姿は凄く絵になっていて、私はそれをぼんやりと眺めていた。
少し経ってふと我に返った。私は鞄の中からさっき買ったばかりのペットボトルを差し出す。目の前で人がむせているのに心配しないはずがない。…ちょっとだけ眺めちゃったけど。
｢水、飲みますか？｣
彼は、困惑した様子でこちらを見ていた。
*
講義の都合で、普段来ない校舎に来ていた。
教室に入りとりあえず窓際の席を確保する。
真面目に講義を聞くつもりもなく、話を聞き流しながら外を眺める。バイクに乗りたくなる、そんな上天気だった。
｢コネシマさんに撮影のこと話すの忘れとった…｣
群青色の空を眺めながら今日の撮影のこと、動画の編集のことなど、色々なことを考える。そのまま空から地面へ目線を落とすと、見慣れない喫煙所が視界に入った。
いつも自分が居る校舎の申し訳程度に屋根が付いた喫煙所とは違う、ガラス張りが映えるそれ。
大学は結構な広さがあり、普段からキャンパス内を歩き回るような事がない自分は、当然こんな所に喫煙所があることを知らなかった。
長い講義が終わってからそれなりに離れた自分の校舎に戻るのは何となく気怠く思えたので、そのままそこの喫煙所へ向かうことにした。
.
人が居ないのは気が楽だ。
個室で無音の空間。人通りがほとんどない場所に設置されているからか中は貸切状態で、思っていた以上に居心地が良かった。
休憩のたびに自分の校舎からここまで来るには少々距離があるが、それでも通おうかと思うくらいにはこの場所が気に入っていた。
と、そんなことを考えていたタイミングで人が入ってくる。
まあ誰も来ないなんてことはないか、と思いながら変わらず煙草を吸い続ける。
入ってきたおとなしそうな女性は、煙草に火をつけるのかと思いきや突然こちらに言葉を投げてきた。
｢あ…ショッピ｣
…
……？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 382人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
オレオ - うぅ……続きが気になるんじゃぁ…… (2020年3月15日 6時) (
レス) id: 1e92aa4807 (このIDを非表示/違反報告)
@ぴお - ごめんなさい。ピーカンがピーマンに見えました((殴 (2020年2月29日 18時) (レス) id: d14a9375c7 (このIDを非表示/違反報告)
まきす(プロフ) - 雰囲気すごく好きだしこの先どうなるか気になります…。応援してます。頑張ってください！！ (2020年1月28日 0時) (レス) id: ffb43308bb (このIDを非表示/違反報告)
夏蜜柑 - うわ〜予想外の所で正体が！続きが凄く気になります、、更新頑張ってください！ (2020年1月27日 20時) (レス) id: 60683cdb14 (このIDを非表示/違反報告)
ひこばえ(プロフ) - かなさん» ありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです；；；マイペースになるかと思いますが更新頑張ります…！！ (2020年1月26日 15時) (レス) id: 5cb8a216c2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ひこばえ | 作成日時：2020年1月25日 18時
