噛み痕 ＿syp ページ9
「Aさん」
『何』
「別れません？」
『急に何』
なにを言っても変わらない対応、その冷たさ。最早 俺らカップルの間に愛など生まれていない。最初こそバカップルのようなイチャイチャっぷりを見せ、私達結婚しようね的な口約束もしてた訳だが。
「Aさん、明らか俺のこと好きじゃないっすよね？」
知り合う前の、クールどころではない冷たさが滲み出ている。スマホばっか見て 俺の方を見てはくれない。一匹狼で 近付いたら喰い千切るぞオーラがすごい。
『別に、嫌いやないけど。』
「好きって言ってない時点で分かるんすよ」
ようやくスマホから目を離して俺を見てくれた。俺を見つめるその目は真っ暗で 深淵を見ているようで 柄にもなく怖いと感じた。
「ッAさんが俺のことなんて もう興味ないことなんか、っ！！」
言いかけて、やめた。黒く重い圧が 喋ることを許してはくれなかった。
『…じゃあ私も言うけど、ショッピこそ私に飽きてるよな。一応彼女の私を差し置いて、他の女と遊び行こうなんて いい度胸じゃん。』
その目に秘められた哀しみと怒り。ふるりと体が震える。怖くて仕方ないはずなのに、Aさんの真っ黒い目が 美しく見えてしまう。
「あれは違いますよ。Aさんへのプレゼント選んでたんす。」
『ダウト。しっかり手ェ繋いで楽しそうに話してたくせに』
鋭い眼光。嘘つきと罵る唇が光に当てられて はらりと光る。ゾクゾクとした背徳が背筋を伝った。
『私は別にショッピのこと飽きてない。今でも好きやし、あんな光景嘘やって信じたいけど、』
「アレ、Aさんってまだ俺のこと好きやったんすね？」
『…そりゃそうやろ。好きやなかったらとっくに別れとるわ。』
だんだんと 気付かれないように 此方のペースに持ってくる。まだ真実を吐くには早い。もっと、Aの、感情に歪んだ顔が見たい。
「それは良かったっすよ。俺も Aさんのこと好きっす」
『……信じられるわけないわ。』
信じられない って感情と、信じてみたい って感情が混ざりあって クールビューティーな顔が歪みかけている。口の端から涎が垂れそうになる。
「それでいいですよ。…あ、これプレゼントっす」
ほうら、カッチャン。
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まる麺 - タイトル回収が天才すぎです、！面白かったです！ (7月19日 14時) (
レス) @page49 id: 81fa0833c9 (このIDを非表示/違反報告)
戦慄(プロフ) - わあああ…すっごいすきです…どのお話もとっても素敵です…！ (2023年1月3日 12時) (レス) id: e831999098 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さき。 | 作成日時：2022年8月23日 9時
