【prsk】可惜夜海岸掠われて【朝函蕫まふゆ】 (ページ2)

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がさりと教科書とノートを閉じて重ねたあと、テーブルの上で腕を組んで腕の上に顔を置く。

まふゆは変わらず、勉強しながら話を聞いているよう。

『場所はどこでもい？希望がなかったら、私の方で決めちゃうよ』

「うん」

『ン！ジャ、私が決めちゃうね』

スマホのメモ機能に日付や行く場所、荷物とかを書き込んでいく。全部決まったら、私用とまふゆ用に分けて簡潔にまとめて、まふゆのトークに送る。

それを繰り返し続けた。

『あとは… 』

メモ機能に書き込む指が止まる。まふゆの勉強する手も止まる。

最後に残ったのは… 外へ行く方法。
私はいい。私は特に何も無い。問題はまふゆだ。

まふゆが、1日少しだけ自由に過ごせるか。その権利を、まふゆ自身が奪い取れるか。

当然だけれど、あの親が他の友達と遊びに行くことを許すわけがない。まふゆをずっと縛りつけているあの親が。

遊びに行くとバレないように外に出るには、まふゆ自身が頑張るしかない。それくらい、まふゆにはどうってコトないかもしれないけれど。

私が全部サポートできればよかったのに。

私がランプの魔人なら、まふゆをなんともないように連れ掠って、どこまでも続く沖縄のコバルトブルーな海を歩いてみせて、まふゆのしたいこと全部やって、何事もなかったかのようにまふゆを家に戻せたのに。

残念ながら、わたしは人間。そんなことできもしない。

重たい肉の塊が少しうざったくなった。これを剥いで、空へと飛び出せたならよかった。

海に行きたいなら、海を泳ぎたいなら、海を歩きたいなら、着替えでもお金でもなんでも、私が全部全部用意するから。

だから、

『まふゆ、頑張れる？』

「うん」

まふゆがほんのりと笑っているような気がして、私も口角がフと上がった。