双つの黒 8 ページ49
「ああ気に食わねえ。太宰の顔も態度も服も全部だ」
「私も中也の全部が嫌いだね。好きなのは中也の靴選びのセンスくらいだ」
「あ……?そうか?」
太宰さんの言葉に、自分の靴を見る中原中也。仲の悪い太宰さんも認めるほどの靴なのか、と私も一緒になって見る。
「うん。勿論嘘。靴も最低だよ」
「手ッ前ェ!」
「落ち着いてください、中原ちゅ……中原さん!」
中原中也の横を通りすぎてそういう太宰さんにキレた彼を宥めようと試みる。しかし、それよりも早く中原中也は太宰さんの後頭部へとその足を振り下ろそうとした。……が。
「無駄だよ。君の攻撃は間合いも呼吸も把握済みだ」
「加減したんだよ。本気なら頭蓋骨が砕けてたぜ」
「そりゃおっかない。ま、中也の本気の度合いも把握済みだけど。ほーらほらほらこっちおいでA。そんな奴の後ろにいたら危ないよ」
「私は犬扱いですか」
太宰さんは華麗に避けると、振りかえって私に側にくるように指示をする。怒り心頭の中原中也を横目に見つつ、彼の横を通りすぎた。
「ほら、居たよ」という太宰さんの声につられて視線をたどると、木の幹に張り付けられてるQがいた。
「眠り姫様ねえ……」
「姫って感じではないですね……」
「木の根を切り落とさないと。中也、短刀貸して」
「あ?あぁ……ん?確か此処に……」
「あ、さっき念の為に掏っておいたんだった」
「手前……」
中原中也は再び怒りを露にしたが、ぐっと堪えていた。
「さて、やるか」
太宰さんは短刀をQの頚に宛がった。私が太宰さん、と思わず声が出る一方、Qの仲間であるはずの中原中也は黙ったままだった。
「……中也は止めないの?」
「首領には生きて連れ帰れと命令されてる。だがこの距離じゃ手前のほうが早え。それに、その餓鬼見てると詛いで死んだ部下達の死体袋が目の前をちらつきやがる。やれよ」
「そうかい。……じゃ、遠慮なく」
短刀が掠れる音が響いた。太宰さんが切ったのだ。Qに絡んでいた植物を。
よかった、と安堵する。今の太宰さんに人を殺してほしくはない。
「甘え奴だ。そう云う偽善臭え処も反吐が出るぜ」
「Qが生きてマフィアに居る限り、万一の安全装置である私の異能も必要だろう?マフィアは私を殺せなくなる。合理的判断だよ」
「………どうだか」
納得がいかないような中原に太宰さんは「それに」と続けた。
「Qを殺すことをAは望まない」
「…太宰さん……」
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時