双つの黒 3 ページ44
心地のいい風が髪を撫でた。ぼんやりと横浜の風景を眺めていると、遠くで鳴っていた足音が次第に大きくなる。
横に座っていた太宰さんが立ち上がり、足音の主と対面した。
「ようこそ、首領」
「四年振りだねぇ」
やってきたのはポートマフィアの首領、森鴎外。部下たちを後ろに携えながら、道端で出会ったかのように彼は片手をあげて挨拶をした。
「私が購ってあげた外套はまだ使ってるかい?」
「もちろん、焼きました」
ひしひしと物言えぬ殺気が伝わってきた。太宰さんは全く悪気がないように笑顔で言うのに対し、森は無言のまま、視線を私に移した。そのまま彼は少し驚いたように目を見開き、笑みを深めた。
「おや、もしや君が噂の子か。太宰くんとはどういう関係なのかな?」
「え?あ……」
私が答えようとしたその時、太宰さんが私の横腹を肘でつついた。喋るなということだろう。ここは一先ず太宰さんに任せるしかない。
「彼女はただの『私の』助手です。それ以上でも、それ以下でもない」
「そうかい?変だねぇ」
森と私の視線が交わる。奥底の知れない、濁った瞳。まるで蛇に睨まれた蛙のように動けない。
「私には、君たちはそれ以上の何かを感じるのだけど」
―――一体どういう意味だ。
まとわりつくような視線が躰を伝った。悲鳴があがるのをなんとかこらえ、負けじと森鴎外をにらみ返す。
すると、みかねた社長が静かに前へ歩み、彼の名前をよんだ。
「―――森鴎外殿」
「武装探偵社社長、福沢諭吉殿」
「竟にこの時が来たな」
「探偵社とポートマフィア。横浜の二大異能組織の長がこうして密会していると知ったら、政府上層部は泡を吹くでしょうねぇ」
クスクスと楽しそうに笑う森に対し、社長は微動だにしなかった。そして社長は森を見据えたまま、
単刀直入に云おう、と切り出す。
「探偵社の在る新人が、貴君らポートマフィアとの“同盟”を具申した」
58人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時