うつくしき人は寂として石像の如く 10 ページ3
「人虎は逃げたのか、小娘」
芥川は私に攻撃をしかけながら話しかけてきた。芥川は余裕そうだ。対する私は、少しずつ体力が削られている。
「……さぁね。どうだろう」
「フン、まあいい。まずは貴様からだ」
「敦くんのところには行かせないよ」
黒獸の速さが上がった。黒獸を攻撃を受ける寸前でかわす。後ろをみると、コンテナがへこんでいた。凄い力だ。あの後気絶してしまった鏡花ちゃんを安全な所へ運んだが、大丈夫だろうか。
鏡花ちゃんが心配になって視線をずらしたのがいけなかった。そのせいで、黒獸が一匹迫っていることに気づかず、足を掬われる。
「よそ見とは余裕だな」
「しまっ……!?…ぐっ……」
黒獸に足を食われはしなかったが、地面に腹から叩きつけられた。
足音がして、それから背中に圧力がかけられる。芥川が私に馬乗りになったのだ。そのまま後ろから首を絞められ、苦しさのあまり掠れた声しかでない。地面に顔が擦れて痛い。
「僕は貴様のような奴が嫌いだ。何の苦労もせず、のうのうと裕福に生きているお前が」
―――何の苦労もしていない?
「…っ…」
―――私が?
「貴様の異能力は【視界に入った】自身に対する攻撃を反撃するだけ。視界にさえ入らなければ、貴様の異能など無意味」
―――お前に私の何がわかる。
「死ね小娘。死んで
―――私は、私は、私は私は私は私は。私は!!!
「此処が貴様の墓場だ、小娘」
「いい、え…」
何とか絞り出した声で芥川の声を遮った。私は異能力を発動させる。直後、私と芥川の間に爆風が発生する。なにかを察した芥川は咄嗟に私と距離をとり、様子を伺う。
服が破れるから、異能力を本来の使い方で使いたくなかったのだ。だが、そんなこと云っている場合ではない。
「なにっ――!?」
視界が煙に覆われて見えないが、芥川が驚く声が聞こえる。芥川にとって、この現状は予想外だったようだ。
芥川は一つだけ勘違いしている。私の異能力は、ただ【視界に入った】自分に対する攻撃を反撃する能力ではない。そう見えるように振る舞っていただけだ。
私の異能力は、
「死ぬのは私じゃない。貴方の方よ」
自分が【望むもの】を身体から【創造】できる異能力だ。
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塩わさび - ミヤさん» コメントありがとうございます!おもしろいといっていただけるなんて光栄です…!!!頑張って更新していきたいと思います……! (2018年4月18日 23時) (レス) id: e627b6cc05 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ - 続編おめでとうございます!人間創造、とっても面白いです!これからも頑張ってください。応援しています! (2018年4月17日 21時) (レス) id: ce29b99b88 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:塩わさび | 作成日時:2018年4月16日 21時