【歌い手】お願いだから嫌いにさせて

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「そうだ、3階にカフェあるんだっけ」

「そやで、行く？」

「行く」


*


案内されたのは、カップルシート。

横にふたつ椅子が並べられているだけだが、妙に近い。


「ケーキセットをお願いします」

「あ、俺も同じものを」

「かしこまりました」



「空、綺麗だね」

「な、ちょっと眩しいけど」


夕日がもう少しで沈みきってしまう。

でも、沈み切るその瞬間が1番輝けるなんて、残酷だなぁ、なんて考える。


明日もその次も、夕日は落ちるけども。


「なぁ、A」

「なーに、センラ」

「月が綺麗ですね(愛しています)、ってやつ、知っとる？」

「夏目漱石だっけ」

「知っとるんや、意外。」

「殴るよ?」

「知らなそうだなぁって」

「殴るね」

「嘘やで！嘘！な！嘘！」


*


「なぁ、A。」

「なーに、センラ」

「……夕日が、綺麗ですね、……なんて」

「……。」


夕日が綺麗ですね(あなたの気持ちが知りたいです)、なんて言葉、

知っているのかな、A。


「……この後に見える月も綺麗ですよ(あなたと一緒にいたいです)、とか？」


……！


「……ほんまに？」

「……。」

「へへ、なぁ、もっかい言って、もっかい！」

「…もう絶対に言わない」

「えぇ、だめ？」

「だめ」

「そっかぁ、……ふふ、嬉し。」


「ほら、ケーキ来たから。食べよ」

「……好きやで、A」

「……うるさ」

「んふふ」

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