14 ページ14
SIDE:A
それは廊下を歩いていたとき。
廊下の角を曲がろうとしたら、坂田と絢香さんの声が向こう側から聞こえてきた。
「ねえ坂田くん、わたし、一緒にお昼ご飯食べるのやめる」
そう言う絢香さんの声に、私は足を止めた。
「えっ、なんで?」
「わたし、あそこに居たくない、なんか、Aちゃんに嫌われているような気がして、」
「そんな訳ないやん、考えすぎやで?それにA、嫌いなら正面から言うし!Aちょっと無愛想だから勘違いしちゃったんかも」
無愛想は余計だが、勘違いされているのはそうかもしれない。ちょっと苦手意識があるだけで、態度に出したりはしてないから。
「それでもわたし、行かない」
「なんで?もしかして俺のこと、嫌いになったん?」
「嫌いになんか!……好き、だけど、」
ただ――――と続けて、
「わたし、Aちゃんにやっぱり嫌われてるから、」
「だからーっ!勘違いやって、心配せんでええの!な?」
「で、でも、わたし、……」
「?」
「……Aちゃんに、昨日睨まれて……」
身に覚えのない、”睨んだ”という事実。
私はそんなことした覚えはない。
2,3秒ほど沈黙が続く。
「……え、」
「昨日お昼ご飯食べてる時に、」
「勘違い、ちゃうん?」
「ううん、睨まれているのに気づいて、Aちゃんの方向いたら目を逸らされて、」
「……。そ、か、Aとちょっと話してくるわ」
「えっ、ううん、いいの、本当に、坂田くんとAちゃんの仲を壊す訳には、」
「はは、幼なじみやで?喧嘩の1つや2つ、した事あるから絢香ちゃんは気にせんでもええの!」
「……わ、わかった」
くしゃっと絢香ちゃんの頭を撫でた坂田。
そしてこちらへ向かってくる足音。
盗み聞きしていたのがバレたら、ここで問い詰められるかもしれない。
私はくるりと方向転換をして、すぐそこにある教室に逃げるように入った。
坂田は、絢香さんの言うことを信じたのだろうか。……いや、今の話しているのを聞いてたら何となくわかる。
「……信じちゃった、よなあ」
休み時間の終わるチャイムが鳴り、生徒がみんな教室へ入っていった。
私は教室へ向かうことも無く、保健室へ行き、そのままベッドを借りて、潜る。
そして誰にも聞こえないように、涙を流した。
前の席の坂田と、今は顔を合わせたくなかったから。
343人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
柚子(プロフ) - いい感じにすれ違って行ってますね(?)まぁ楽しみということです!頑張って下さい (2020年4月11日 22時) (レス) id: f5a2d726a8 (このIDを非表示/違反報告)
絵が上手くなりたい(プロフ) - うわぁ…気持ちは分かるけど絢香ちゃん腹黒だぁ…坂田さん、複雑な気持ちだろうな…。更新待ってますね (2020年4月11日 0時) (レス) id: e48c7240eb (このIDを非表示/違反報告)
きほん(プロフ) - はじめまして、とてもキュンキュンしながら読ませていただいています!ドキドキハラハラキュンキュンで、個人的にはどちらのオチも見てみたいですが、どうなるのかとても楽しみです! (2020年4月9日 0時) (レス) id: d19256ebb3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきんこ - 年下組が夢主ちゃんのことでバチバチ(?)なっているのがキュンとしました。あと、作者様の書く文がとても好みです!その文才を私にも恵んで下さい…長文失礼しました。 (2020年4月3日 12時) (レス) id: 5d83f022ba (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:しゃけ | 作成日時:2020年3月30日 0時