misbehave Ⅱ (ページ25)

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～岸 side～

｢ただいま…。｣

灯りもなく、真暗な家。

ポツリと俺だけの声が落ちて消える。

最近、美玲は仕事で新事業を任された。と言っていた。
帰りもいつも遅い。
3日間帰ってこなかった時もあったっけ…。

寂しいなんて感情はもうとうの昔に無くなっていたから、別に何日帰って来なくてもさほど支障がない。

こんな風に思ってしまうのも、俺がAで満たされているからだろうか…。

｢俺、サイテーじゃん…、笑｣

冷蔵庫を開き飲めもしないビールを片手にソファーにドカッと腰を下ろした。

缶のフタを開けるとプシュッと音をたてた。
多分、酒好きには至福の瞬間だろうと思いながら一口飲み込めば口いっぱいに独特の苦さと炭酸が広がった。

｢うぇ、、、やっぱにげぇ…、｣

次の一口が中々進まない。

｢やめときゃ良かったー…｣

だらんと背もたれに寄りかかり何も無い真っ白な天井を見上げたまま暫くボーッとしていた。

ｰｶﾞﾁｬ

玄関が開く音がした。

｢何やってるの、飲めもしないのにビールなんて。｣

部屋に入ってきて早々俺の手にあるすっかりぬるくなってしまったビールを見て美玲が言う。

｢あぁ、、接待とか多くなってきたからちょっと鍛えようかな…っておも…って…。｣

美玲は何故かジッと俺を見つめて動こうとしない。

いつもは俺の話を興味なさそうにしているのに…。

｢今週末、お母さんがご飯食べに来てって。空いてる？｣

突然の誘いに戸惑ったのと、俺のありきたりな嘘がバレなかった安堵とでポカンとマヌケな顔してるんだろうな…、笑

｢あぁ、、うん。空いてるよ。｣

じゃあ、週末よろしく。と、自室に向かう美玲の後ろ姿をボーッと眺めていると美玲が立ち止まった。

｢優太さ…、、ビール飲めないなら捨てなよ。｣

こっちを見ずに言う美玲。

何となくだけど、これを言いたかったわけじゃないんだ。と言うのは分かる。

でも、今、美玲の本心を聞く事は出来ない。
多分聞いては駄目な気がしたから、分かった。とだけ返事をした。