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伯拾壱頁─密会 5─ ページ6

「単刀直入に云おう。探偵社の或る新人が、貴君らポートマフィアとの“同盟”を具申した」

「ほう」

「私は反対した。非合法組織との共同戦線など、社の指針に反する。だがそれは、ポートマフィアに何度も撃たれ斬られ拐かされた者から為された提案だ。言葉の重みが違う。故に組織の長として耳を傾けざるを得なかった」




ポートマフィアと組む話は私も敦君から直接聞いた。

初めて会った時に覚えた印象とは打って変わったあの表情。

それは歴戦の猛者のような、有り余るほどの悲愴を乗り越えた者のようだった。




「お互いに苦労の絶えん立場ですな」

「結論を云う。同盟はならずとも、一時的な停戦を申し入れたい」

「...興味深い提案だ」




社長さんの提案に流石の森さんも驚いたようで返しに僅かな間が空く。




「理由を云う。まず第一に────」

「シェリングを読まれた事は?ナッシュにキッシンジャーは?」

「いずれも戦争戦略論の研究家ですね」




突然の話題転換に戸惑う社長さんに変わり、太宰さんが横につき冷静に答える。

あまりにも懐かしい名前の羅列に私の脳内には様々な記憶が飛び交った。

と云っても、薄い砂嵐がかかったような不鮮明なものばかりだが。




「孫子なら読むが」

「国家戦争と我々のような非合法組織の戦争には共通点があります。何だと思うかね、A君?」

『...わぁ、突然ですね」




社長さん達より後ろにいた私に話が振られると思っていなかった私はぬいぐるみを撫でていた手を止め一言そうこぼす。




『そうですね...協定違反をしても罰するものが居ないことでしょうか。停戦の約束を突然マフィアが破ったり、 探偵社が裏切っても咎めようがないので』




私なら裏切れない状況を作ってから協定を結ぶだろう。

それが無理なら地味で面倒な悪どい腹の探り合いだ。




「そう。損をするのは停戦協定を信じた方のみ。先に裏切ったほうが利益を得る状況下では、限定的停戦は成立しない。あるとすれば完全な協調だが────」

「それも有り得ない」




森さんの言葉を引き継ぐ太宰さん。

彼は相変わらず内心の読めない表情をしていた。

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煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» 了解です、合っていて良かったです(*^^*)承認しておきますね。最新パートまで読んでいただきありがとうございます!過去編共々頑張っていきます! (2019年6月15日 17時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 最新パートまで読ませていただきました!これからの有島ちゃんが楽しみです! (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» 狼楼に直しときました…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
狼楼(プロフ) - 煉華☆さん» あ!あってます!直すの忘れてた…汗 (2019年6月15日 15時) (レス) id: 8b97f6f5d3 (このIDを非表示/違反報告)
煉華☆(プロフ) - 狼楼さん» すみません、今「炎化狼」という名前の方の申請をもらっていたのですが、狼楼さんでしょうか?名前に狼とついていたので質問させていただきました。 (2019年6月15日 14時) (レス) id: fa2422e9a4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:煉華 | 作成日時:2018年3月6日 7時

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