切り開け、未来を。【1】

▽毒 ページ16

スコープside





ガチャリと、玄関が開いた音がした。




スコープ「お。

帰ってきたかな、ファルコンJr。」





リビングルームにいた全員が、一斉に顔を上げる。



今日はあいにくパソコンの調子が悪くて、ミッションの様子を見れなかったから、みんな心配していたんだ。





…だが、何かがおかしい。


俺らの中ではムードメーカー的な存在のファルコンJr。



ミッション帰りは特にテンションが上がって、『ただいま〜』ってうるさいくらいに帰ってくるのが通常なのに。



…声が全然聞こえない。





ファルコン「…ちょっと待ってコマンダー！


頼むから一回ドクターに診てもらって…」





ようやく聞こえてきた声は、なんだか泣きそうだ。





コマンダー「必要ない。


…付いてくるな！」





バタンッ…と、乱暴にドアが閉まる音が聞こえる。



方角的にコマンダーの部屋、だろうか。




しばらくの沈黙。




ファルコン「…どくたぁ…」




リビングルームの扉をそっと開けたファルコンJrは、目に涙をいっぱい溜めていた。




ドクター「どうしたの？ケガでもした？」




ドクターがなるべく優しく問いかけると、彼は力なく首を横に振る。





ファルコン「…おれは、平気なんだけど…

コマンダーが……」



ドクター「コマンダーが？」



ファルコン「…っどく…」



ドクター「…どく？……毒！？」



ファルコン「うん…

耐性があるから、だいじょうぶって言うんだ…

でも、おれ、心配で…」



ドクター「…。

…コマンダーは今、部屋にいるの？」



ファルコン「うん…」



ドクター「…すぐ準備するから、一緒に行こう。

詳しい話聞かせて。」



ファルコン「…うん…！ありがと…」





慌てて診察道具を手にしたドクターに、ギークが声をかけた。





ギーク「…これ、よかったら使いなよ。」





ポーンっと、なにかを投げる。





ドクター「…？

…まさか、コマンダーの部屋の…。」



ギーク「そう、合鍵。

あ、手に入れた経緯には触れないでね。」



ドクター「…絶対自分で勝手に作ったでしょ？」



ギーク「さぁねぇ？


…ほら、早く行かなくていいの？」



ドクター「…とりあえず、借りてくね。」






ドクターはそう言って、バタバタと部屋を後にした。

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