青葉城西高校排球部のメンバーはモブインの日記を拾ったようです。

真実 ページ16

side及川


Aの日記は、涙の水分でごわごわで、殴り書きのような濃い字も滲んでいて。それは、Aがどれだけ泣いたのかを物語っていた。

文脈も文法もおかしいし、誤字だってある。消しゴムの跡はない。けど、そんなの気にしてられないくらいに切羽詰まって、辛くて、泣いてたんだ。

｢遅れましたぁ！…あれ、A先輩は？｣

｢…まだ、来てないよ｣

体育館に入ってきた美帆ちゃんに、俺は震える声で言う。ああ、こんな子が俺たちを騙してたなんて。

｢ふえっ…やっぱり…先輩っ、仕事してくれないんだ…！｣

美帆ちゃんは、泣き出した。ぞっとするほど綺麗に泣いていた。俺たちは、この涙に騙されていたのか。Aのあの時の涙は信じなかったのに、この子の涙は簡単に信じた。

なんで。なんでだ。どうして俺は、Aを信じてやれなかったんだ。Aの方が長くいたのに。俺…は

｢及川先輩、顔が蒼い、ですよ…？皆さんも…どうしたんですか…？｣

倒れそうになるのをなんとかこらえて、声を絞り出す。

｢いつも、君は仕事をしていたの…？｣

｢しっ、してました…！信じてくれないんですか？私の事っ…｣

｢美帆ちゃん、いつも、応援してくれてたよね…？いつ、ドリンク準備とか、してたの？｣

｢そっ、れ、は…｣

ああ。俺は。俺は。

｢うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！｣

主将、失格じゃないか。

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