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数回に分けて身体に適量付けると、松川がこちらを見る。
「やっぱ朝付けてたのAのじゃなかったんだ」
「え、気付いてたの?」
缶を取り俺好みの甘さの少ないシトラス系のデオドラントを見る。
「なんかオンナノコみたいな匂いだったよな」
「そーそー。姉貴が貸してくれた。」
「相変わらず仲良いな」
毎朝文句を言いながらもアイロンを貸してくれるし、なんならたまに弁当も作ってくれる。ブラコンではないが、面倒見の良い姉だ。
「まぁ、普通じゃね?」
「料理もうまいしな」
「たまに焦がしてる」
笑いながら言えば松川も笑った。
もう次の授業を乗り越えれば放課後となる。今日から部活動見学が始まるということを思い出し、少しだけ痛んだ胃を抑える。
「A?腹痛ぇの?」
「この後の部活を思ったら胃が痛い。」
「トラウマレベルだな」
間違いねぇわ、と言えば笑われる。少しむすっとした顔をすれば、わしゃわしゃと雑に頭を撫でられた。
「Aはいつも通り、俺らをサポートしてくれりゃいいんだよ」
「がんばる」
舌っ足らずに言えば「いいこ」と言われた。
一気に顔が熱くなる。
「いいこって、同い年ですけど!」
「見た目は俺のが年上だろ?」
「それもう自分で見た目成人してるの認めてんじゃん」
確かに、と言いながら笑う松川に少し安心する。熱が治まっていくのがわかった。案外すぐだ、と胸を撫で下ろす。
「次なんだっけ?」
「あー、古典?今日は国語サンドイッチ」
「ナニソレ」
と松川はケラケラ楽しそうに笑う。着替えも終わりネクタイを締め袖を少し捲る。
「ちょ!堂島」
「なに?」
隣の席の女子が戻ってきて早々に俺に話しかけてきた。
「フったってマジ?」
「その話かよ」
「いーじゃん!それよりなんで?」
なんで、と言われてもなんとも言えない。理由までは聞いていないようで小声で詰め寄られる。
「今は部活忙しいし、及川みたいに惨めな思いするなら付き合わない方がいいって思っただけ」
「じゃあ引退してから、とか言ってあげたらよかったじゃん」
「俺らの引退なんて一番遅くて1月だぞ?かわいそーじゃん」
俺そんな優しくねーし、と言えばムスッとしながらもそれ以上何も言わず「あっそ」と古典の準備を始めた。
俺もロッカーを開く。古語辞典を探すとなかった。
「どした?」
「花に借りパクされた。ちょっと行ってくる」
「いてら」
授業が始まるまで少し時間がある。すぐに教室を出た。
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シャバ僧(プロフ) - 優愛さん» ご要望ありがとうございます!負けず嫌いな男主なので、まだ未定ですが、一応別で男主受け松川夢ございます……よろしければ、どうぞ(宣伝) (2022年12月8日 23時) (レス) id: 97accd6b89 (このIDを非表示/違反報告)
優愛(プロフ) - 主人公は受けがいい!! (2022年12月8日 21時) (レス) @page35 id: 5e22586db0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャバ僧 | 作成日時:2022年6月14日 0時