牡丹が落ちる時【mfsk】

牡丹36 ページ36

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しばらく無言の時間が続いた

かちこちと若様愛用の時計が秒針を鳴らし、少し解けた氷がカロンっと音を立てる




さかたの目に私がはっきりと写っていて、まるで自分と話しているような気さえしてきた




そして、1分だか30秒だかずっとお互いが黙っていたと思う






｢じゃ、仕方ないな。
それなら代わりに、Aをいつでも好きに使える権利を貰う｣




｢私を使う？｣







明らかに私に責任と重責がかかるさかたの言葉に、オウム返しをしてしまった

だって使うって……




そもそも私は若様にいいように使われているというのに、どうしてこの男の面倒まで見なくちゃいけないのだ



嫌に決まっている






｢ここの組織の情報を渡すだけ…な？簡単やろ？｣



｢それって内通者っていうんだけど｣



｢あれもダメこれもダメって、おまえ若様の言いつけ守んなくていいのか？｣





言いつけって……確かにそう言っていたけど、あれはただの癇癪のようなものだし、そのうち頭も冷めればいつものようにクレバーな策をぽろぽろと出してくれるはずだ




｢Aも俺を監視してたいやろ？
だって俺は、Aの組織を潰そうとしてんやから｣




｢………わかった。でも渡せない情報は絶対に渡さないし、いつでも暇なわけじゃないから｣



｢おう、それでいいよ！｣







この人は…太陽のように笑う。


こんな人が復讐に人生を使ってるなんて誰が思うだろう





陽の当たる道で綺麗な女の人と手を繋いで、彼の言うデートというものをして、そしていつか家族を作る
そんな人生を送ればいいのに





｢………玄関まで送るよ｣

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