初めまして ページ7
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ドライヤーのスイッチを切ればすぐに宇都宮さんが声をかけてくれた。彼に案内されるまま部屋に入る。
ut「そんな緊張せんでもいけるで。大丈夫。Aちゃん連れてきたで〜」
一切遠慮せずに勢いよく襖が開かれる。
昨日見かけた人、初めて見る人。結構な人数がいるみたいだ。全員の名前を覚えられるか不安ではあるが、覚える必要があるのか…。
sha「昨日ぶりやね。ゆっくり寝れた?」
?「寝れとったら神経図太すぎるやろ。」
ut「もうちょい優しく言うたりやシッマ。これから一緒に生活するんやから」
昨日と同じように私に対して当たりが強い人はシッマと呼ばれているらしい。…あの人は少し苦手だな。
tn「すみません、Aさん。立ちっぱなしもなんですし、どうぞ座ってください。」
?「トントンが女性に話せてる…!」
随分、空気感が緩い。それでも、ヤクザであるこの人たちはきっと人を…。考えるのはやめよう。
どうせもう、これからどこかに連れていかれるんだし。関わらないんだから。
桃瀬さんに言われた通り、一番入口に近いところに座ろうとするも、宇都宮さんに手を引かれて座ることが出来ない。もしかして、ここじゃダメだったのかな。
ut「あー、Aちゃんはあっち。ね?」
『は、はぁ…。』
彼の指差す方は、桃瀬さんがいる所だ。確かに、座布団が一つ置かれている。…桃瀬さんの隣に。
彼があの場所に座る意味は、多分だけど…。
『…お隣、失礼します。』
tn「そんな畏まらんでください!」
?「ははは、トン氏もさすがに近くに座られるんは緊張するよなぁ?」
tn「うっさいわ!…とにかく、これが顔合わせになるんやからお前ら自己紹介しろや。」
自己紹介…。されたところで、私はこれから違う場所で働かされるか、臓器が売られて死んでしまうかだと思うのだけど…。覚える必要はあるのだろうか。
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