・ ページ20
***
眉間に皺を寄せて、俯きながら彼はこう言った。
zm｢突然組にやってきた弱そうな女に、どう接したらいいんか分からんかってん。｣
『はぁ…、なるほど』
zm｢い、いきなりグイグイ関わっても、困るやろうし。かと言って冷たくするんもなって思って。｣
まぁ、何だこの人とは思ったけど。家の中でもフード被ってるし。でも、なんか普通の人なんだなと思った。それだけだ。
zm｢もうちょい愛想良く言えたらよかってんけど、う、上手いこと出来んくてな｣
『気にしてないので謝らないでください。』
zm｢そんな事あったのに、庭で倒れとる俺に声掛けて運んでくれるし。｣
『それは、まぁ…。倒れてる人がいたから声を掛けただけですよ。ゾムさんじゃなかったら、殺されてたでしょうけど。』
そう。ゾムさんだったから、良かったものの。全然知らない人だったら？私はここにはいないだろう。何となく彼だと思ったから。
zm｢…ほんまに、死ぬで自分｣
『はい。死に近い世界にいた事がないので、自覚が足りてないのも分かってます。それでも、助けなきゃって思っちゃうんですよ。』
zm｢甘いなぁ｣
『結果的にゾムさんだったので良かったじゃないですか！ご飯も食べて元気そうに見えますし。私は声掛けて良かったって思ってますよ』
どこまでも一般人である私に、人を見捨てるなんて出来ない。知ってる人であろうが、そうでなかろうが関係ない。踏み出した足を止めることは出来ない。
zm｢…あいつらやったら一切助けてくれんからな。ちょっと変な感じやわ｣
『こんな事でいいなら、いつでも力になります。』
そう言えば、今までの硬い表情を和らげて鋭く尖った歯を見せて笑う。
zm｢おもろいなぁ。…ありがとう、A｣
和解、ではないけれど。少しだけ歩み寄れた気がする。大きな一歩だ。
『ふぁ…。』
zm｢あ、ご、ごめんな。眠いよな｣
『大丈夫ですよ。そろそろ部屋に戻りましょうか』
zm｢送るわ｣
『いえ！ゾムさんは早く寝てください。』
zm｢あかん。家の中でも何あるか分からんねんから。ほら、行くで｣
朝と全く雰囲気の違うゾムさんに、頬が緩む。過保護な気もするけど、普通に話せるようになって良かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 208人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
