〜第一章〜 海 【歌い手】 2

【83】カクテル ページ33

まふまふ



「じゃあ、あとはAくんのだけか」



出演する日と曲名。そして出番の数。
これだけがなかなか決まらなかった。

それは一応十五歳未満の子供は八時以降、表に出てはいけないという決まりがあり、早番にしないといけなかったりと色々と難しいところがあるからだ。




『あ、あのっ…歌…書き…ます、？』

「え？」

『いや、その、僕にできること、何かなって考えた時に、作詞作曲くらいしか出来ることが無いので…』



『力になりたいんです』というAくんの手元にはまだ白紙のままのオリジナル曲のページ。

確かに、Aくんの作詞作曲の腕は凄い。
けれどXYZは、元はお酒だ。


お酒が身近にある訳では無いAにとって
すごい難しい課題と言える。




『色んな人が集まり、混ざり歌う…それと似たお酒がXYZ。…でも、BARの箱自体も表せると思うんです。
色々な違うお酒が棚に並んで、その中から好きなお酒を選んで嗜む…』



前言撤回。
この子の想像力は凄い。

学びたいと、本を手に取ったら離れないようなそんなしがみつく力がある。



「ピースなら、どんな曲調にする？」



思わず、聞いてみたくなる。

この子の秘めた心の奥底は海のようで
潜りきれないから。




『僕なら、バラードで描きます…だって、色気ある曲は絶対


大人の皆さんにとって歌いやすいでしょうし…そのっ、…色々な経験も…あるでしょうし…』





そう言い染まる頬の色。


それを見てきっと思いは通じただろう。




「任せる。」

「俺も。」

「ピースくんに、託すよ。」



みんなも、そう微笑んだ。

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