〜第一章〜 海 【歌い手】 2

【70】大人…？ ページ20

A side



あの後、みんなでお鍋を食べてたわいのない話をして、年末恒例紅白を見た。

｢小さい頃、わざわざ誰が出るかメモをしてたなぁ｣と、懐かしい思い出が脳裏に浮かんだ。


『米津さんは紅白でないんすか』
「でたいけど、まだ無理ですよ」


「作りたい曲とみんなが好きな曲調って違うんだよ」
と、米津さんはお酒を注ぎながら言った。

その姿は少し寂しそうで、それを見ていた僕は少し切なくなる。

でも、本人が言うように米津さんがハチPさんだった頃の曲風と今の曲は確かに曲風が違う。

万人受けする曲とネット受けする曲はやっぱり違うのだと聞く度に思う。

それが寂しいなと思う反面、

「何かを変えることが出来るのはそれはきっと、何かを捨てることが出来る人間だ」

と、いうアニメのセリフを思い出す。


ハチさんは、多分一度手を引いたのだと思う。
VOCALOID というものから。

お鍋の豆腐を食べていると、隣の部屋でそらるさんとギターを弾いていたまふさんがバタバタと向かってくるのがわかる。

その後を追いかけているそらるさんは、お酒が入っているからか少し頬が赤い。


「ハチ！！」
「なんだなんだ」
「す！ま！ぶ！ら！しよ」


びし！！と、「犯人は…お前だｯ！！」と言わんばかりに指を指し、そらるさんは「あほか」とツッコミながらも腕を捲り、本気モードだ。

「勝負じゃい！！後悔させてやろう」
『俺も負けません！！』

WiiUのコントローラーを棚から取り出し渡す。
何気にプロコンなのがガチ勢を醸し出している…。

「米津くんwwいつもww
ボコボコにされてるのにwww」


「いや、負けないから」と、謎の自信に満ち溢れている米津さんが普段とかけ離れすぎていて腹がちぎれそうだ。


ゲームをしながらおつまみを食べる。
そして氷をグラスに入れ、コントローラーを握る。






そしてテレビを見つめる眼差しは…







＿＿＿鋭かった。





『負けたら、年齢関係なく何かを奢る…』
「いや、決めよう」





お酒とは、人を面白くするものだ…



まふまふ→富士山パーク全員分
そらる→夢の国全員分
米津→大阪の夢の国全員分
ピース(米津の弟子)→カラオケフリータイム全額負担



「ピースは俺の弟子だから。まふまふから見たら後輩な」
「なんすかそれ！！」
『wwwwwww』



みんなの目は





いつにも増して真面目だった。








(なんか、壮大…)

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